・・・これに対する著者の論議はわざと大部分を省略するが、しかし彼の面目を伝える種類の記事は保存することにする。 アインシュタインはヘルムホルツなどと反対で講義のうまい型の学者である。のみならず講義講演によって人に教えるという事に興味と熱心をも・・・ 寺田寅彦 「アインシュタインの教育観」
・・・その詳細の数字は略するが、冬期すなわち十二月一月二月の三か月中における総降水日数を、最近四か年について平均したものをあげてみると、次のようである。伊吹山 六九、二 岐阜 四十、二敦賀 七二、八 京都 ・・・ 寺田寅彦 「伊吹山の句について」
・・・画を論ずる場合に映画の技術に関する科学的の基礎と、その主要なテクニークについて一通りの解説をするのが順序であるが、この一編の限られた紙数の中にこれを述べている余地がないから、ここではいっさいこれらを省略する。しかし大多数の読者がこの点につい・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・を「テッペンカケタ」で止めて最後の「カ」を略することがあり、それからまた単に「カケタカ、カケタカ」と二度だけ繰り返すこともある。 夜鳴く場合と、昼間深い霧の中に飛びながら鳴く場合とは、しばしば経験したが、昼間快晴の場合はあまり多くは経験・・・ 寺田寅彦 「疑問と空想」
・・・これについては前に書いたことがあるから略する。楠さんは独学で法律を勉強して、後に裁判所の書記に採用された。弟妹とちがって風采もよくてハイカラでまたそれだけにおしゃれでもあった。自宅では勉強が出来ないので円行寺橋の袂にあった老人夫婦の家の静か・・・ 寺田寅彦 「重兵衛さんの一家」
・・・限られた紙数では述べ尽されないからここには略することにした。 寺田寅彦 「塵埃と光」
・・・そうして月々十一円ずつ郷里からもらっている学費のうちからひどい工面をして定価九円のヴァイオリンを買うに至るまでのいきさつがあったのであるが、これは先生に関係のない余談であるからここには略する。とにかく自分がこの楽器をいじるようになったそもそ・・・ 寺田寅彦 「田丸先生の追憶」
・・・これについては前に書いたことがあるから略する。ワシントンからマウント・ウェザーの気象台へ見学に出かけた田舎廻りのがたがた汽車はアメリカとは思われない旧式の煤けた小さな客車であったが、その客車が二つの仕切りに区分されていて、広い方の入口には「・・・ 寺田寅彦 「チューインガム」
・・・これらも分類的に研究したら面白そうであるが今回は暇がないから略する。とにかく一方では遁世守愚をすすめながらも、また一方では知識というものの効能を高く買っていることがよくわかる。第五十一段の水車の失敗は先日の駆逐艦進水式の出来損ねを思い出させ・・・ 寺田寅彦 「徒然草の鑑賞」
・・・ 記紀を文学と言っては当たらないかもしれないが、たとえばその中に現われた神話中に暗示された地球物理的現象の特異性についてはかつて述べたことがあるから略する。 おとぎ話や伝説口碑のようなものでも日本の自然とその対人交渉の特異性を暗示し・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
出典:青空文庫