・・・ 日本人の対自然観が外国人なかんずく西洋人などのそれと比較していかなる特徴をもっているかということについては最近に他の場所でやや詳しく述べたからここでは詳細の解説は省略するが、その要点をかいつまんで言ってみると次のようなものである。・・・ 寺田寅彦 「俳句の精神」
・・・と呼び歩く楊梅売りのことは、前に書いたことがあるから略する。 しじみ売りは「スズメガイホー」と呼び歩いた。牡蠣売りは昔は「カキャゴー」と言ったものらしい、というのは自分らの子供時代におとなからしばしば聞かされたたぬきの怪談のさまざまの中・・・ 寺田寅彦 「物売りの声」
・・・それを書くときりがなくなるからここには略する。ただ一つ頭に刻まれた問題だけを簡単に書き止めておく。 雑草の内にはわれわれの栽培している五穀や野菜や観賞植物とよく似通ったものがはなはだ多い。もしこれらの雑草を特にかわいがって培養し教育して・・・ 寺田寅彦 「路傍の草」
・・・仏教中の様々の食制に関する考は他に誰か述べられる予定があったようであるから茲にはこれを略する。但し最後に前論士は釈尊の終りに受けられた供養が豚肉であるという、何という間違いであるか豚肉ではない蕈の一種である。サンスクリットの両音相類似する所・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・ロダンは花子の小さい、締まった体を、無恰好に結った高島田の巓から、白足袋に千代田草履を穿いた足の尖まで、一目に領略するような見方をして、小さい巌畳な手を握った。 久保田の心は一種の羞恥を覚えることを禁じ得なかった。日本の女としてロダンに・・・ 森鴎外 「花子」
出典:青空文庫