・・・それが週期的ないし非週期的の異同の波によって歳々の不同を示す。 この平均温度というものが往々誤解されるものである。どうかするとその月にその温度の日が最も多いという意見に思いちがえられるのである。しかし実際は月の内でその月の平均温度を示し・・・ 寺田寅彦 「春六題」
・・・説、俗に大陸漂移論と称するものから見た日本陸地の成立、変化、ならびにこれに連関して問題となるべき陸地の昇降、地震、火山現象等を追究するに当たって、しばしば古い過去における水陸分布の状態と現在のそれとの異同が問題となり、その一つの参考資料とし・・・ 寺田寅彦 「比較言語学における統計的研究法の可能性について」
・・・ これとは少し種類は違うが、細胞分裂の機構を説明する一つのモデルとして、表面張力の異同による液滴の分裂などを研究している学者もある。そういうおもしろい研究に対してもその研究題目それ自身に対していろいろの故障を申し立てる学者があると見えて・・・ 寺田寅彦 「物質群として見た動物群」
・・・簡単な実験でも何遍も繰返すうちには四囲の状況は種々に変化するから、結果に多少の異同や齟齬を来すのは常の事である。このような場合における教員の措置如何は生徒の科学的精神の死活に関するような影響を有するものと思う。この場合に結果を都合のよいよう・・・ 寺田寅彦 「物理学実験の教授について」
・・・その間をつなぐ道筋はいくつもあり途上の景観にもまたさまざまの異同がある。それでも、どの道筋にも共通に、たとえば富士が右手に見え近辺に茶畑が見えなければならないといったような要求が満たされなければならない。そういうわけであるから連句の場合には・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・僕等は一時全く忘れていた自然派文学の作例を思出して之を目前の光景に比較し、西洋の過去と日本の現在との異同を論じて、夜のふけるのを忘れたこともたびたびとなった。 斯くの如く僕等がカッフェーに出入することの漸く頻繁となるや、都下の新聞紙と雑・・・ 永井荷風 「申訳」
・・・ ひっきょう、この水掛論は、元素の異同より生じたるものに非ず。その原因は、近く地位の異同より心情の偏重を生ずるによりて来りしものなれども、今日の有様にては、その是非を分つべからず。余輩はただ今後の成行に眼をつけ、そのいずれかまず直接法の・・・ 福沢諭吉 「学者安心論」
・・・第三、地理書 地球の運転、山野河海の区別、世界万国の地名、風俗・人情の異同を知る学問なり。いながら知るべき名所を問わず、己が生れしその国を天地世界と心得るは、足を備えて歩行せざるが如し。ゆえに地理書を学ばざる者は、跛者に異な・・・ 福沢諭吉 「学校の説」
・・・ 又いきなはりい如何せんかと どをしよをか どをしゆうか どげいしゆうか 商に同じいうことを 又どをしゆうか この外、筆にも記しがたき語風の異同は枚挙に遑あらず。故に隔壁にても人の・・・ 福沢諭吉 「旧藩情」
・・・たとえば今、日本大政府の諸省に用うる十露盤も、寒村僻邑の小店に用うる十露盤も、乗除の声に異同なきは、上下の勘定法に関所なきものなり。帳合の法もかくありたきことと余輩の願う所なり。あるいはまた前の如く、二五八三と記すを不便なりといえば、平たく・・・ 福沢諭吉 「小学教育の事」
出典:青空文庫