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・・・老人、君の如き異才を見るの明がなくして意外の失礼をしたと心から深く詫びつつ、さてこの傑作をお世話したいが出版先に御希望があるかと懇切に談合して、直ぐその足で金港堂へ原稿を持って来た。「イヤ、実に面白い作で、真に奇想天来です。」と美妙も心・・・
内田魯庵
「露伴の出世咄」
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・・・ 異才の弟子の能力に高田も謙遜した表情で、誇張を避けようと努めている苦心を梶は感じ、先ずそこに信用が置かれた気持良い一日となって来た。「ときどきはそんな話もなくては困るね。もう悪いことばかりだからなア。たった一日でも良いから、頭の晴・・・
横光利一
「微笑」