・・・景品はほうきと目笊とせっけんで一組、たわしと何とか笊と杓子で一組、下駄に箸が一膳で一組という割合で、いちばん割の悪いのは、能代塗の臭い箸が一膳で一組である。こいつだけは、僕なら、いくら籤に当っても、ご免をこうむろうと思う。 砂岡君と国富・・・ 芥川竜之介 「水の三日」
・・・これが鶯か、かなりやだと、伝統的にも世間体にも、それ鳥籠をと、内にはないから買いに出る処だけれど、対手が、のりを舐める代もので、お安く扱われつけているのだから、台所の目笊でその南の縁へ先ず伏せた。――ところで、生捉って籠に入れると、一時と経・・・ 泉鏡花 「二、三羽――十二、三羽」
・・・……昨夜は、あれから――鶫を鍋でと誂えたのは、しゃも、かしわをするように、膳のわきで火鉢へ掛けて煮るだけのこと、と言ったのを、料理番が心得て、そのぶつ切りを、皿に山もり。目笊に一杯、葱のざくざくを添えて、醤油も砂糖も、むきだしに担ぎあげた。・・・ 泉鏡花 「眉かくしの霊」
出典:青空文庫