・・・もし嘘と思う人は日本に於けるアインシュタイン博士、或はその相対性原理の歓迎されたことを考えるが好い。あれは神秘主義の祭である。不可解なる荘厳の儀式である。何の為に熱狂したのかは「改造」社主の山本氏さえ知らない。 すると偉大なる神秘主義者・・・ 芥川竜之介 「侏儒の言葉」
・・・彼が重力の理論で手を廻さなかった電磁気論は、ワイルによって彼の一般相対性原理の圏内に併合されたようである。これが成効であるとしても、まだ彼の目前には大きな問題が残されている。それはいわゆる「素量」の問題である。この問題にも彼は久しい前から手・・・ 寺田寅彦 「アインシュタイン」
・・・の読める人にとっては、アインシュタインの相対性原理の論文でも、ブロイーの波動力学の論文でも、それを読んで一種無上の美しさを感じる人があるのをとがめるわけにはゆかないであろうと思う。ただ事がらが非情の物質と、それに関する抽象的な概念の関係に属・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・アインシュタインの相対性原理の最初の論文を当時講師であった桑木さんが紹介され、それが種となって議論の花を咲かせたのもその頃の事であったのである。当時の輪講会は人数が少なくてそれだけに却って極めてインチームなものであり、至って「尤もらしく」な・・・ 寺田寅彦 「科学に志す人へ」
一 世間ではもちろん、専門の学生の間でもまたどうかすると理学者の間ですら「相対性原理は理解しにくいものだ」という事に相場がきまっているようである。理解しにくいと聞いてそのためにかえって興味を刺激される人・・・ 寺田寅彦 「相対性原理側面観」
・・・とは事変るが、アインシュタインの相対性原理がまだ十分に承認されなかった頃、この所論に対する色々な学者の十人十色の態度を分類してみると、この『徒然草』第百九十四段の中の「嘘に対する人々の態度の種々相」とかなりまでぴったり当て嵌まるのは実に面白・・・ 寺田寅彦 「徒然草の鑑賞」
・・・はマッハによって批評されたのみならず、輓近相対性原理の研究と共にさらに多くの変更を余儀なくされた。この原理の発展以来「時」の観念はよほど進化して来たが、それはやはり幾何学の「時」の範囲内での進歩である。 吾人の直感する「時」の観念に随伴・・・ 寺田寅彦 「時の観念とエントロピーならびにプロバビリティ」
・・・たとえば相対性原理とはどんな事か、マルキシズムとは何か、バロック芸術とは何、ベースボールとは何、ジャズとは何、そういうことが望みのままに早分りがすれば甚だ便利であり、また時代に適応する所以であるかもしれない。 現代に隆盛を極めている各方・・・ 寺田寅彦 「夏」
・・・しかしアインシュタインは古い昔のガリレーをほじくって相対性原理を掘りだし、ブローイーは塵に埋もれたハミルトンにはたきと磨きをかけて波動力学を作りあげた。 時々西洋へ出かけて目新しい機械や材料を仕入れて来ては田舎学者の前でしたり顔にひけら・・・ 寺田寅彦 「猫の穴掘り」
・・・また相対性原理を設立したアインシュタインが子供のときに独りでこの定理を見付けたとかいう話が伝えられている。この同じピタゴラスがまた楽音の協和と整数の比との関係の発見者であり、宇宙の調和の唱道者であったことはよく知られているようであるが、この・・・ 寺田寅彦 「ピタゴラスと豆」
出典:青空文庫