・・・己れだって粗忽な真似はし無えで、兄弟とか相棒とか云って、皮のひんむける位えにゃ手でも握って、祝福の一つ二つはやってやる所だったんだ。誓言そうして見せるんだった。それをお前帽子に喰着けた金ぴかの手前、芝居をしやがって……え、芝居をしやがったん・・・ 有島武郎 「かんかん虫」
・・・――相棒の肩も広い、年紀も少し少いのは、早や支度をして、駕籠の荷棒を、えッしと担ぎ、片手に――はじめて視た――絵で知ったほぼ想像のつく大きな蓑虫を提げて出て来たのである。「ああ、御苦労様――松明ですか。」「えい、松明でゃ。」「途中、山路で日・・・ 泉鏡花 「栃の実」
・・・ だが、さて、どんな風に実行に移したものかという段になると、丹造にはからきし智慧もなく、あくまで相棒が要った。いいかえれば、再び古座谷某の智慧が必要だった……。 あきれた。いや、正直なところ、以前のことなぞ忘れた顔で、よくもぬけぬけ・・・ 織田作之助 「勧善懲悪」
・・・「さっきのお前の相棒はどこへ行ったい」「皆家へ帰ったよ」「何だ! 皆ここに棲んでるってのは嘘なのかい」「そうすることもあるだろう」「それじゃ、あの女とお前たちはどんな関係だ」遂々私は切り出した。「あの女は俺達の友達だ・・・ 葉山嘉樹 「淫賣婦」
出典:青空文庫