・・・「まあ、山は真っ白だこと、ここから雪になるんだわ。」 年子は、思わずこういって目をみはりました。「山を越してごらんなさい。三尺も、四尺もありますさかい。おまえさんは、どこから乗っていらしたの。」 黒い頭巾をかぶったおばあさん・・・ 小川未明 「青い星の国へ」
・・・多くの若い女が、顔に、真っ白に白粉を塗って、唇には、真っ赤に、紅をつけていました。そこで、やはり、その女たちも、いい声で、唄をうたっていましたが、子供が、風から習った、悲しい唄をうたってきかかりますと、みんなが黙ってしまいました。 子供・・・ 小川未明 「あらしの前の木と鳥の会話」
・・・ はるか、遠い、遠い、星の世界から、下の方の地球を見ますと、真っ白に霜に包まれていました。 いつも、ぐるぐるとまわっている水車場の車は止まっていました。また、いつもさらさらといって流れている小川の水も、止まって動きませんでした。みん・・・ 小川未明 「ある夜の星たちの話」
・・・ ある冬の日のこと、子供は、村はずれに立って、かなたの国境の山々をながめていますと、大きな山の半腹に、母の姿がはっきりと、真っ白な雪の上に黒く浮き出して見えたのであります。これを見ると、子供はびっくりしました。けれど、このことを口に出し・・・ 小川未明 「牛女」
北の国の、寒い晩方のことでありました。 雪がちらちらと降っていました。木の上にも、山の上にも、雪は積もって、あたりは、一面に、真っ白でありました。 おじいさんは、ちょうど、その日の昼時分でありました。山に、息子がいって、炭を焼・・・ 小川未明 「おおかみをだましたおじいさん」
・・・太郎は、いまごろ、おじいさんは、どこを歩いていられるだろうと、さびしい、そして、雪で真っ白な、広い野原の景色などを想像していたのです。 そのうちに、時間はだんだんたってゆきました。外には、風の音が聞こえました。雪が霰が降ってきそうに、日・・・ 小川未明 「大きなかに」
・・・外を見ると真っ白に雪が積もっていました。どこを見ましても、一面に雪が地を隠していました。その村は、北の寒い国のさびしいところであったからであります。 しかし、いいだしたうえは、なんでもそのことを通す主人の気質をよく知っていましたので、彼・・・ 小川未明 「北の国のはなし」
・・・ 夏になると、真っ白な雲が屋根の上を流れました。女は、ときどき、それらのうつりかわる自然に対して、ぼんやりながめましたが、「ぐずぐずしていると、じきに日が暮れてしまう。せっせと働かなけりゃならん。」と、そばから主人に促されると、・・・ 小川未明 「ちょうと三つの石」
・・・雪はだんだん地の上に積もって、どこを見ても、ただ真っ白なばかりであります。小川も、田も、畑も雪の下にうずもれてしまって、どこが路やら、それすら見当がつかなくなってしまったのであります。 そのうちに、日が暮れかかってきました。からすが遠い・・・ 小川未明 「宝石商」
・・・野原は一面に見渡すかぎりも雪にうずまって真っ白に見えました。そしてそこへ出ると、そりの跡も風にかき消されて、あるかなしかにしか見えなく、寒い北風が顔や手や足を吹いたのでした。君は僕の家来 ようやくその野原を通りこして、かなた・・・ 小川未明 「雪の国と太郎」
出典:青空文庫