・・・それは時計台で、塔の上に大きな時計があって、その時計のガラスに月の光がさして、その時計が真っ青に見えていました。下には窓があって、一つのガラス窓の中には、それは美しいものばかりがならべてありました。金銀の時計や、指輪や、赤・青・紫、いろいろ・・・ 小川未明 「青い時計台」
・・・ ある日のこと、猟師たちが、幾そうかの小舟に乗って沖へ出ていきました。真っ青な北海の水色は、ちょうど藍を流したように、冷たくて、美しかったのであります。 磯辺には、岩にぶつかって波がみごとに砕けては、水銀の珠を飛ばすように、散ってい・・・ 小川未明 「黒い人と赤いそり」
・・・しかして、それが、静まったときに、その真っ青な水の面には、少年の白い顔がありありと映って、じっと三郎の顔を見つめて、音なく笑ったかと思うと、たちまち消えてしまいました。三郎は、怪しんで、四辺を見まわしましたけれど、空色の着物をきた少年の姿は・・・ 小川未明 「空色の着物をきた子供」
・・・たちまち妙な男は大きな声で、「やあ、おまえさんの顔色は真っ青じゃ。まあ、その傷口はどうしたのだ。」と、電信柱の顔を見てびっくりしました。 このとき、電信柱がいうのに、「ときどき怖ろしい電気が通ると、私の顔色は真っ青になるのだ。み・・・ 小川未明 「電信柱と妙な男」
・・・北の海は色が真っ青で、それに夕焼けの赤い色が血を流したように彩って美しさはたとえるものがなかったのです。 三人はある岩の上に立ちまして、きれいなたいまい色の雲が空に飛んでいました。娘らは手に持っている赤い紙に小さな石を包んで、それを波間・・・ 小川未明 「夕焼け物語」
・・・ 私はしびれを切らせて、彼が降りる筈の駅まで迎えに行くと、半時間ほどして、真っ青な顔でやって来た。「どうしたんだ」ときくと、「徹夜して原稿を書いてたんだ。朝までに出来る積りだったが、到頭今まで掛った。顔も洗わずに飛んで来た」・・・ 織田作之助 「鬼」
出典:青空文庫