・・・ よっぽど立姿でもいいって云われたと見える。 千世子は京子を引っぱる様にして書斎に通した。 ほんとうにがんなりした様な顔をして口をきくんでも京子はのろのろとした。 何か一つ事をするとほんとうにうんざりしますねえ、・・・ 宮本百合子 「千世子(三)」
・・・ 学生時代のまんまの符牒のような挨拶を、ピンを唇で押えているので口の利けない多喜子に向ってかけ、桃子はすこしはなれたところからぐるりと尚子の立ち姿を見まわした。「いいじゃないの、なかなか」「よかったわね、やっぱりこのカラーの型に・・・ 宮本百合子 「二人いるとき」
・・・しかも沈着で勤勉にそれを克服してゆくオオドゥウの人間的品位は、すでに小さいマリイの生きかたのところどころに閃いており、意地わるな院長にわざと辛い農園へやられる場合の威厳にみちたといえる程の若いマリイの立ち姿にはっきり現れている。 若い敏・・・ 宮本百合子 「若い婦人のための書棚」
出典:青空文庫