・・・あれだけならば何もカメラを借りずに筋書きを読まされても、印象においてはたいした変わりはない。これは映画の草昧時代において、波の寄せては砕けるさまがそのままに映るのを見せて喜ばせたと同様に、トーキーというものにまだ一度も接したことのない観客に・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・ 以上は映画の世界像における力学的各要素を筋書的に略記したに過ぎない。他日機会があったら、もう少し詳しくこれらのおのおのについて検討を試み、さらにその結果に基づいて映画の未来の可能性について具体的な考察を遂行したいと思っている。・・・ 寺田寅彦 「映画の世界像」
・・・これなどももうひと息どうにかすると相当おもしろく見られそうな気がしたが、現在のままではどうにもただあわただしく筋書を読んでいるような気がするだけであまりにあっけないような気がしたのは残念であった。どうと言って話にはできないが見るとたまらなく・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・なぜかと言えば、詩歌にはその言葉の連続によって生ずる一貫した企図の表現、平たく言えば筋書きがあって、その筋書きによって代表された一つのまとまった全体があり、そういう点では律動的でない戯曲や小説や紀行文や随筆やとも共通な要素をもっている。それ・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・世間見ずの坊ちゃんの浅薄愚劣なる世界観を、さもさも大人ぶって表白した筋書である。こんなものを演ぜねばならぬ役者はさぞかし迷惑な事だろうと思う。あの芸は、あれより数十倍利用のできる芸である。○油屋御こんなどもむやみに刀をすり更えたり、手紙・・・ 夏目漱石 「明治座の所感を虚子君に問れて」
・・・反民主的な演説の筋書きを与えられ、おくれた日本の、ものの考えかたにアッピールした婦人代議士は、今日自身の存在のために、そのようにして自身を立たしめた保守の力に向き直って闘う必要に迫られているのである。 今回選ばれた婦人代議士たちの質がど・・・ 宮本百合子 「一票の教訓」
・・・つまり筋書の根本のところで、女ごころの内容を、型にきめてしまっているところがあるからであろう。細かくこの点に触れて観て行くと、外国でも女優はまだ持ち味を肉体の特長とともに一般的な女的性格の上に投げかけている程度に止っており、しかも、女優自身・・・ 宮本百合子 「映画の恋愛」
・・・二、作品の筋書、または未完成な下書きでもいい、作家はそれを工場クラブなどの一般集会で読んで、みんなの意見や忠告をきけ。三、各文学団体の間に行われる理論上のいろいろな論争を工場でやれ。四、われわれ革命的生産に従事する労働者は、作家・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ センセーショナリズムは、内剛外屈の吉田内閣が民主化すてながしの一九四九年度筋書として極端にまで使用した方法でもあった。政治と文化とを一貫して、世相を押しきったこのような潮流は、一九四九年度の毎日文化賞の準備調査、読売新聞社の良書ベスト・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・小説が文学的感銘を失い、その世界に水々しく生きている人間の姿を失って、題材の筋書を辿るばかりのものに堕したという不満が一般に聞かれるようになった。それにも拘らず、長篇書き下し小説の流行はかつてない勢で出版界を風靡した。慌しく忙しく流行作家は・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
出典:青空文庫