・・・天主閣はその名の示すがごとく、天主教の渡来とともに、はるばる南蛮から輸入された西洋築城術の産物であるが、自分たちの祖先の驚くべき同化力は、ほとんど何人もこれに対してエキゾティックな興味を感じえないまでに、その屋根と壁とをことごとく日本化し去・・・ 芥川竜之介 「松江印象記」
・・・そして、レオナドその人は国籍もなく一定の住所もなく、きのうは味方、きょうは敵国のため、ただ労働神聖の主義をもって、その科学的な多能多才の応ずるところ、築城、建築、設計、発明、彫刻、絵画など――ことに絵画はかれをして後世永久の名を残さしめた物・・・ 岩野泡鳴 「耽溺」
・・・だから、戦時中は小才のきく部隊長のような藤吉郎が清洲築城に活躍しても、よむ人は、逆に、やっぱり秀吉ほどの人物は、と、自分たちが非人間に扱われている現状に屈する方便に役立ってゆくのである。吉川英治は、青苔のついた封建の溝をつたわっている。こん・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
・・・である奴隷の労役によってされた時代から、有名な築城師があらわれました。ついで、芸術家としての名建築家が、王侯貴族たちの名声と権力と金の力とをつくしてその腕を発揮しました。近代社会の経済機構が基礎をかためてからは、資本が、建築のすべての条件を・・・ 宮本百合子 「よろこびの挨拶」
出典:青空文庫