・・・ ブルジョア文化は、その階級的特性によって、文学哲学の如く高度に発展した形態にあってはごく僅かのブルジョア・インテリゲンツィア婦人しか包括し得ないと同時に、それらの彼女らは謂わばブルジョア文化の精華として多分に、ブルジョア観念論的世界観・・・ 宮本百合子 「婦人作家は何故道徳家か? そして何故男の美が描けぬか?」
・・・マリア自身、いかにもロシアの女らしいゆたかな生活力と天質に燃えながら、しかも同時代のロシアの歴史の精華と何の接触ももつことができず、それどころか、全く誤った見かたにおかれた彼女の境遇を私は哀れに思う。 当時全ヨーロッパが最良の精力をつく・・・ 宮本百合子 「マリア・バシュキルツェフの日記」
・・・人類の文化の精華にふれてゆけるという或る憧れやロマンティックなもので、フランス語を学んでいたら、今度パリがおちたらフランスは博物館国になっているという風な云いかたをする人も出て、何だかその語学をつづけてゆく自信がないようになったということも・・・ 宮本百合子 「若い娘の倫理」
・・・我々の国家が或る権力の代表者を主権者とせずして、道の代表者を主権者とすることは、確かに我々の国体の精華である。がもとよりこの道は、理念として人類を引き行くものであって、或る時代或る階級の特殊な思想を意味するのでない。いかなる思想も、それが根・・・ 和辻哲郎 「蝸牛の角」
出典:青空文庫