・・・希望の精霊は、大気とともに顫う真珠の角笛を吹く……」 けれども、そう書き終るか終らないうちに、苦痛の第一がやって来た。彼女は、幸福に優しく抱擁される代りに、恐ろしく冷やかに刺々しい不調和と面接し、永い永い道連れとならなければならなかった・・・ 宮本百合子 「地は饒なり」
・・・ この職人衆のリアリスティックな場面に対して、二組の恋人たちが、森の中で精霊たちのいたずらにあってうきめをみるおかしみが、巧みに配置されている。しかし、きょうのわたしたちは、「真夏の夜の夢」の変化の多様さ、飽きさせなさの間にやっぱりルネ・・・ 宮本百合子 「真夏の夜の夢」
・・・釈尊やイエスはこれを解いて、多くの精霊を救う。この救われたる衆生が真の人生を現わしたか。救われずして地獄の九圏の中に阿鼻叫喚しているはずの、たとえば歴山大王や奈翁一世のごとき人間がかえって人生究竟の地を示したか。これは未決問題である。宗教の・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫