・・・百日の後彼は再び鎌倉に帰って松葉ヶ谷の道場を再興し、前にもまして烈々とした気魄をもって、小町の辻にあらわれては、幕府の政治を糺弾し、既成教団を折伏した。すでに時代と世相とに相応した機をつかんで立ってる日蓮の説法が、大衆の胸に痛切に響かないは・・・ 倉田百三 「学生と先哲」
・・・まいあなたの安全器を据えつけ発火の予防も施しありしに疵もつ足は冬吉が帰りて後一層目に立ち小露が先月からのお約束と出た跡尾花屋からかかりしを冬吉は断り発音はモシの二字をもって俊雄に向い白状なされと不意の糺弾俊雄はぎょッとしたれど横へそらせてか・・・ 斎藤緑雨 「かくれんぼ」
・・・しからば、どこの誰をまずまっさきに糾弾すべきか。自分である。私である。太宰治とか称する、この妙に気取った男である。生活は秩序正しく、まっ白なシーツに眠るというのは、たいへん結構な事だが、しかし、自分ひとり大いに努力してその境地を獲得した途端・・・ 太宰治 「十五年間」
・・・への具体的な答えには、農林大臣が米の専売案を語り、それと全く反対に農林省の下級官吏は結束して大会をもち、食糧の人民管理を要求し、戦争犯罪人糺弾の人民投票をやっているという今日の事実さえも、包括されなければならないのである。責任を問うための警・・・ 宮本百合子 「石を投ぐるもの」
・・・――D・H・ローレンスをしつこく非道徳漢として糺弾したのは、彼と別の社会群に属す男たちの不安と嫉妬であったといえるかもしれない。 D・H・ローレンスは、あらゆる自然現象のうちに、ほとんど神秘主義に近い生命感をうけとった作家であった。自然・・・ 宮本百合子 「傷だらけの足」
・・・その人達は何にもいわないで、一人一人の胸の中に、その争議から逃げたい、もし糺弾されないならば、自分達だけはこっそり妥協してもいい、もういやだ、と思いながら「純潔」に一夜を明かしていたとする。それは果して働く人として純潔な一夜であろうか。私達・・・ 宮本百合子 「社会生活の純潔性」
・・・民主主義の潮流に逆行する現在のファッショ的存在は、全世界の民主主義を愛する人により徹底的に糺弾され断罪されるときがくるだろうということを私はいいたい。日本の検察当局が事実正義を愛する者の味方であるならば、この陰謀の一つであるこの公訴を即刻と・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・世界がもし、日本の天皇を本当の元首とよぶにふさわしい人格をもった大人であると認めたなら、法律上の責任はともかく、人道上の責任について糺弾しなかったことはありません。そのひと個人の上に悲劇をもとめる心持はないけれども、人民に対して一軍人ほどの・・・ 宮本百合子 「ファシズムは生きている」
・・・更に進んでよしんば、自身の弱点のすべてを、インテリゲンチアの小市民性によるものと結論し糺弾したとしても、現実の本質はつかまれたという感じを、私たちに与えないであろうと思う。 私たちの切に知りたいのは、性格にそのような動揺する暗さ明るさを・・・ 宮本百合子 「冬を越す蕾」
・・・若い世代に対する糺弾者であり、われわれ自身の老いることを欲しない良心の蹂躙者である権力に向って、わたしは心から次の質問をします。学問の自由、良心の自由、理性の自由をまもろうという動機に立つ学生の運動を、ノン・ポリティカルであるべしと宣伝する・・・ 宮本百合子 「若き僚友に」
出典:青空文庫