・・・晴れた日が続く、一日、目がさめて雨が降っているのを知ると、どんなにそれが珍しく、嬉しく素敵なことか!「ああ雨が降ってる!」と心に叫ぶ時のわくわくする亢奮を、今も尚鮮かに思い出せるが――然し、子供の時分雨が降ると何故あんなに家じゅう薄・・・ 宮本百合子 「雨と子供」
・・・ チェホフは小市民的卑俗さ、愚劣な伝習というようなものを常に鋭く諷刺し、その下らなさ加減を興味深い短篇の中へ素敵な技術でもり込んでいる。然し、チェホフの諷刺は、どこまでも、自由主義人道主義的インテリゲンチアの諷刺だ。というのは、チェホフ・・・ 宮本百合子 「新たなプロレタリア文学」
・・・あの方のも、素敵ですね。放胆なイマジネーション。ファンタジア アラ……然し。――私の心は、どうしても満足しない。とん とん、と、胸に轟くこの響が、あれ等の裡に聴えましょうか。迫り、泣かせ、圧倒するリズムがあれから浸透・・・ 宮本百合子 「五月の空」
・・・ フフーム。それで、アメリカ製ですか? そうではない? 成程! 素敵だね。われわれのソヴェトでもこんな機械が出来るのか!」 ところで彼が書いて『十月』や『成長』に発表する「職場にて」を見ると、それは十分労働者の心持を掴んでいない。 ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・っていう優秀映画館で公開された時は素敵だった。伴奏は特別作曲された音楽だったし。 帝国主義と植民地とがどういう関係におかれているかということの真実が堂々としたプドフキンの芸術的手腕で把握されていた。 ところがね、面白いことには、・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・ 公園の茂った樹の間には、図書館、芝居、音楽、活動写真館、その他、ラジオだの発明相談所だのがウンとある。素敵な水浴場もある。一晩ゆっくり楽しんだって、隅から隅までは見きれるものじゃない。 白い木綿や麻のルバシカを着たソヴェトのプロレ・・・ 宮本百合子 「ソヴェト労働者の夏休み」
・・・それこそ素敵だ! Yは、卓越したパイ焼職人のように、上手に地図と時間表とを麺棒に使い、貧弱な旅費の捏粉を巧に長崎まで延して来たのであった。 宿を出、両側、歩道の幅だけ長方形の石でたたんだ往来を、本興善町へ抜け、或る角を右にとる。町家は、・・・ 宮本百合子 「長崎の印象」
・・・のポスターは材料の掴みかた、置きかた、頭がはっきりしていて、色彩的効果も素敵だった。 なかなかうまいぞと思いつつ漫画を見てゆくうちに感じた。面白いがこれ等は見たところ特に展覧会のために描かれたものらしい。展覧会でうんとデモンストレーショ・・・ 宮本百合子 「プロレタリア美術展を観る」
・・・ レーニンは素敵な文章家だと云うようになった。そして、彼女自身の文章もかわって来た。簡単に分り易く、しかもその一句一句が魂に刻みこまれるように書くことは、書こうとする事をそれだけハッキリ、強く掴んでいなければ出来ないことなのだということ・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
・・・ 天気がいいから実に素敵だ」 何度もそう云った。「あ、見ましたか? 水車がありましたよ、やっぱり今でも田舎では水車が廻っているんですね」 平凡な田舎の景色と、横の空いた座席に投げ出されているアルマの箱と、尾世川自身の声の中に何か・・・ 宮本百合子 「帆」
出典:青空文庫