・・・ なる程、農民の生活から取材した作品、小作人と地主との対立を描いた作品、農村における農民組合の活動を取扱った作品等は、プロレタリア文学には幾つかある。立野信之、細野孝二郎、中野重治、小林多喜二等によって幾つかは生産されている。そこには、・・・ 黒島伝治 「農民文学の問題」
・・・事実兄は、ぼくを中学の寄宿舎に置くと、一家を連れて上京、自分は××組合の書記長になり、学校にストライキを起しくびになり、お袋達が鎌倉に逃げかえった後も、豚箱から、インテリに活動しました。同志の一人はうちに来て、寄宿から帰ったぼくと姉を兄貴へ・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・「いいえ、組合の、……」 組合? 紋切型辞典に曰く、それは右往左往して疲れて、泣く事である。多忙のシノニム。 僕も、ちょっぴり泣いた事がある。「毎日、たいへんですね。」「ええ、疲れますわ。」 こう来なくちゃ嘘だ。・・・ 太宰治 「渡り鳥」
・・・三吉たちの熊本印刷工組合とはべつに、一専売局を中心に友愛会支部をつくっていて、弁舌がたっしゃなのと、煙草色の制服のなかで、機械工だけが許されている菜ッ葉色制服のちがいで、女工たちのあいだに人気があった。三吉は縁のはしに腰かけ、手拭で顔をふい・・・ 徳永直 「白い道」
・・・川村にしても、高橋にしても、斎藤にしても、小野にしても、其他十数人の、彼を支持する有力な子分は、皆組合の手に奪われてしまったのだ。 それを、いま自分が、争議中の一切の恨を水に流して、自ら貰い下げに行くことは、どれだけ彼らに大きな影響を与・・・ 徳永直 「眼」
・・・がその個人的に出来上った芸術家でも、彼ら同業者の利益を団体として保護するためには、会なり倶楽部なり、組合なりを組織して、規則その他の束縛を受ける必要ができてくる。彼らの或者は今現にこれを実行しつつある。してみれば放縦不羈を生命とする芸術家で・・・ 夏目漱石 「中味と形式」
・・・けれども大体の筋からいって、凡てこれらは政府から独立した文芸組合または作家団というような組織の下に案出され、またその組織の下に行政者と協商されべきである。惜いかな今の日本の文芸家は、時間からいっても、金銭からいっても、また精神からいっても、・・・ 夏目漱石 「文芸委員は何をするか」
・・・大抵目ぼしい、小作人組合の主だった、は、残らず町の刑務所へ抛り込まれてしまった。「これで、当分は枕を高くして寝られる」と地主たちが安心しかけた処であった。 枕を高くした本田富次郎氏は、樫の木の閂でいきなり脳天をガンとやられた。 ・・・ 葉山嘉樹 「乳色の靄」
・・・少数の職業組合が旧教の牧師の下に立って単調な生活をしていた昔をそのままに見せるこう云う町は、パリイにはこの辺を除けては残っていない。指定せられた十八番地の前に立って見れば、宛然たる田舎家である。この家なら、そっくりこのままイソダンに立ってい・・・ 著:プレヴォーマルセル 訳:森鴎外 「田舎」
・・・大将「イタリヤごろつき組合だ。」特務曹長「なるほど、ジゴマと書いてあります。」「おい、やれ。」特務曹長「実に立派であります。」大将「これはもっと立派だぞ。」特務曹長「これはどちらからお受けになりましたのでありますか。」・・・ 宮沢賢治 「饑餓陣営」
出典:青空文庫