・・・野中先生のおっしゃるには、この世の中にいかにおびただしく裏切りが行われているか、おそらくは想像を絶するものだ、いかに近い肉親でも友人でも、かげでは必ず裏切って悪口や何かを言っているものだ、人間がもし自分の周囲に絶えず行われている自分に対する・・・ 太宰治 「春の枯葉」
・・・平生之を怠っていながら、一旦同書が現代文学全集中に転載せらるると見るや、奇貨居くべしとなし、俄に版権侵害の賠償を請求するが如きは貪戻言語に絶するものである。それにも係らず黙々として僕は一語をも発せず万事を山本さんに一任して事を済ませたのは、・・・ 永井荷風 「申訳」
・・・が言語に絶する伏字、削除をもって発表されている。きくところによると、この題は『中央公論』編輯者によって変えられたもので本来は「党生活者」という題であるらしい。そして、去年の十月頃執筆されたものであるそうである。「党生活者」は、その親しみ・・・ 宮本百合子 「同志小林の業績の評価によせて」
出典:青空文庫