・・・しかしそれらは栄養生殖に不適当であるためにまもなく絶滅したと言って、ここに明らかに「適者生存の理」を述べている。残存し繁栄した種族は自衛の能力あるものか、しからざれば人間の保護によるものであると付け加えている。そして半人半獣の怪物が現存し得・・・ 寺田寅彦 「ルクレチウスと科学」
・・・ ナチス・ドイツの絶滅した今日、エリカ・マンはふたたび故国のドイツの土をふんでいるであろう。が、行動性にとみ、民主精神に燃える彼女に、敗れはてたドイツの姿はどううつっているであろう。ことばにつくせない犠牲をはらったドイツの民主主義のため・・・ 宮本百合子 「明日の知性」
・・・しかしその段階では、まだ着るものも買えない人々の存在が絶滅されていないし、「着るに着られない」という状態も、またそのひとの力相応とみる矛盾がのこされている。 本当にわたくしたちが社会で働き得ること、その働きによって、衣食住が保障されるこ・・・ 宮本百合子 「衣服と婦人の生活」
・・・そのために、うちすてられた開拓団のいくつかは、数百名をひとかたまりとして女から子供まで、絶滅させられた。満蒙奥地の住民のそのような怨み、憎悪が開拓団に向けられた理由こそは、関東軍が絶対命令で実行させつづけた住民からの収奪であったのに。きょう・・・ 宮本百合子 「ことの真実」
・・・戦争は、地球から絶滅されなければならない。いくらそうは云っても、現実問題としてなかなか戦争というものは無くなりはしないだろう。それが常識として通る限り、ますます根気づよく、正直に戦争の絶滅は要求され、戦争挑発はしりぞけられなければならない。・・・ 宮本百合子 「『この果てに君ある如く』の選後に」
・・・日本の財閥が外見上解体されたとして、どうして徒弟制が絶滅したといえよう。バイブルに、男女は差別ある賃銀を、と書いてはなかろうが、カソリック教徒である日本の文相は、それらを教員たちとの係争点にしている。あらゆる市民が半封建的なものからの離脱を・・・ 宮本百合子 「作家の経験」
・・・る人間の幸、不幸をわかつ原因となるものとして健康人と病人との差をあげているが、この人間生活の不幸の一見最後的な差別の根源にしろ、矢張り終窮は人生の多数者の生活条件いかんにかかっていてよっぽどの程度まで絶滅され得るものである。ロマン・ローラン・・・ 宮本百合子 「昨今の話題を」
・・・けれど、そういう犯罪的ファクターは、都民一人あまさず指紋をとることで絶滅することができないものであることも明瞭である。悪に誘われ――それが悪とさえわきまえず悪におちいる少年少女の、垢のついた小さい十本の指を、拇指から小指へとくっきり指紋にと・・・ 宮本百合子 「指紋」
・・・ このことは一九三三年以来、日本にはプロレタリア文学の運動が絶滅させられていた事実によって証明される。プロレタリア文学運動の窒息させられたあと、反ナチの人民戦線運動が日本にもつたえられた。これは、ドイツの封建的残滓の上に発生した封建的独・・・ 宮本百合子 「誰のために」
・・・民族の独立と人民の生活の安定のために、帝国主義、国際ファシズムと闘い戦争をこの地球から絶滅するのは、人民の偉大な事業であると。なぜなら、どの戦争でも殺されなければならないのは常に人民であり、その殺戮はますます大規模になっているのだからと。中・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
出典:青空文庫