・・・ 夕なぎの継続時間の長短はいろいろな事情にもよるが海岸からの距離がおもな因子になる。すなわち海岸から遠くなるほどなぎが長くなるわけである。 東京では、夏の暑い盛りに天気のいい日だと夕方涼しい南がかった風が吹くので、瀬戸内海地方のよう・・・ 寺田寅彦 「海陸風と夕なぎ」
・・・たぶん温度が急激に降下するときに随伴する感覚であって、しかもそれはすぐに飽和される性質のものであるから、この感覚を継続させるためには結局週期的の変化が必要になると考えられる。 子供の時分、暑い盛りに背中へ沢山の灸をすえられた経験があるが・・・ 寺田寅彦 「さまよえるユダヤ人の手記より」
・・・そうかと思うとまた天気のいい金曜が続きだすとそれが幾週となく継続することもあるように思われた。もちろん他の週日に降る降らぬは全く度外視しての話である。 これもやはり、他の多くの場合と同様に自分の注目し期待する特定の場合の記憶だけが蓄積さ・・・ 寺田寅彦 「時事雑感」
・・・の知識を確実に把握するためには支那、満洲、シベリアは勿論のこと、北太平洋全面からオホツク海にわたる海面にかけて広く多数に分布された観測点における海面から高層までの気象観測を系統的定時的に少なくも数十年継続することが望ましいのであるが、これは・・・ 寺田寅彦 「颱風雑俎」
・・・その影響は単にその場限りでなくて、下車した後の数時間後までも継続する。それで近年難儀な慢性の病気にかかって以来、私は満員電車には乗らない事に、すいた電車にばかり乗る事に決めて、それを実行している。 必ずすいた電車に乗るために採るべき方法・・・ 寺田寅彦 「電車の混雑について」
・・・それで読者のうちで過去あるいは将来に類似の現象を実見された場合には、その時日、継続時間、降水の形態等についての記述を、最寄りの測候所なり気象台なり、あるいは専門家なりへ送ってやるだけの労を惜しまないようにお願いしたい。 これらの天象につ・・・ 寺田寅彦 「凍雨と雨氷」
・・・しかしそうばかりでもないかもしれないと思うことは、一体二科会とか美術院とかいう展覧会が十年も二十年も継続しているという不思議な事実自身で証明されているような気もする。これは少し変った言い分のようであるが、しかし一般に云って、同じ団体がそう永・・・ 寺田寅彦 「二科展院展急行瞥見記」
・・・クラドニの実験や、またヴァイオリンの場合に松やにをつけた毛で摩擦する際にどうして振動が継続されるかの問題についてはヘルムホルツ以来本質的にはほとんど一歩も進んだ解釈は与えられていないように思う。もちろんただ通り一ぺんの説明はついている。すな・・・ 寺田寅彦 「日常身辺の物理的諸問題」
・・・った式目のいろいろの規則は和声学上の規則と類似したもので、陪音の調和問題から付け心の不即不離の要求が生じ、楽章としての運動の変化を求めるために打ち越しが顧慮され去り嫌い差合の法式が定められ、人情の句の継続が戒められる。放逸乱雑を引きしめるた・・・ 寺田寅彦 「俳諧の本質的概論」
・・・太十は数年来西瓜を作ることを継続し来った。彼はマチの小遣を稼ぎ出す工夫であった。それでもそれは単に彼一人の丹精ではなくて壻の文造が能くぶつぶついわれながら使われた。お石が来なくなってから彼は一意唯銭を得ることばかり腐心した。其年は雨が順よく・・・ 長塚節 「太十と其犬」
出典:青空文庫