・・・僕の従来の経験から割り出されたこの人生哲学がどこまで立証されるかは、僕の経験をさらに続行することによってのみ立証されることで、そのほかには立証のしようがないのだから仕方がない。 さて僕の最近の消息を兄に報じたついでに、もう一つお知らせす・・・ 有島武郎 「片信」
・・・ しかし万一もし盗んでいたとすると放下って置いては後が悪かろうとも思ったが、一度見られたら、とても悪事を続行ることは得為すまいと考えたから尚お更らこの事は口外しない方が本当だと信じた。 どちらにしてもお徳が言った通り、彼処へ竹の木戸・・・ 国木田独歩 「竹の木戸」
・・・まず、あいつを完全に征服し、あいつを遠慮深くて従順で質素で小食の女に変化させ、しかるのちにまた行進を続行する。いまのままだと、とにかく金がかかって、行進の続行が不可能だ。 勝負の秘訣。敵をして近づかしむべからず、敵に近づくべし。 彼・・・ 太宰治 「グッド・バイ」
・・・その一方、戦犯被告と捕虜に対する残虐行為の裁判は続行されています。この面こそ強調されるべきです。 歴史はくりかえすものではありません。全く同一の現象が、同一の内容でくりかえされることは歴史上ないことです。まして、歴史は決してそのままのく・・・ 宮本百合子 「新しい卒業生の皆さんへ」
・・・『知識』が、各誌共通のトピックのほかに内容の多様性を求めて一頁論壇、谷崎潤一郎の文章読本の短い批評、宗教についての記事などを広汎にのせていることはプラスであり、続行されたい点である。けれども、たとえば「音楽雑談」や一頁人物評、吉川英治につい・・・ 宮本百合子 「新年号の『文学評論』その他」
・・・当時宮本は公判廷に出ても席に耐えないでベンチの上に横になる程疲労していたが、公判は続行された。すでに他の同志たちは分離公判が終結していた。被告宮本ただ一人、傍聴者は弁護士と妻と看守ばかりという法廷であった。戦争に気を奪われ左翼の存在を忘れさ・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・断乎とした彼の即決で、句会はそのまま続行された。高田の披講で一座の作句が読みあげられていくに随い、梶と高田の二作がしばらく高点を競りあいつつ、しだいにまた高田が乗り越えて会は終った。丘を下っていくものが半数で、栖方と親しい後の半数の残った者・・・ 横光利一 「微笑」
出典:青空文庫