・・・石から取って覆えした、持扱いの荒くれた爪摺れであろう、青々と苔の蒸したのが、ところどころむしられて、日の隈幽に、石肌の浮いた影を膨らませ、影をまた凹ませて、残酷に搦めた、さながら白身の窶れた女を、反接緊縛したに異ならぬ。 推察に難くない・・・ 泉鏡花 「縷紅新草」
・・・この本の脚注に、昔パルティア人が馬のいななくを防ぐためにそのしっぽをしっかりと緊縛するという方法をとった。そうすると馬は尻尾の痛苦に辟易していななく元気がなくなると書いてある。どうも西洋人のすることは野蛮で残酷である。東洋では枚をふくむとい・・・ 寺田寅彦 「俳諧瑣談」
・・・物質的生存の不安に対する暗示も其に与って力ある事でございますが、現代の公衆の箇分子は、相互に緊縛した相対的関係を忘れる事が出来ません。そして、社会の有機的組織は、箇人の種々雑多な箇性に依って構成されるものではあっても、若し自分が比較的安易に・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
出典:青空文庫