・・・ およそ物の有害無害を知らんとするには、まずその性質を知ること緊要なり。その性質を知らんとするには、まずその物を見ること緊要なり。熱国の人民は氷を見たることなし。ゆえにその性質を知らず。これを知らざるがゆえに、その働の有害なるか無害なる・・・ 福沢諭吉 「経世の学、また講究すべし」
・・・、人民と交際を絶つの覚悟ならばすなわち可ならんといえども、いやしくも上流の知見を下流に及さんとするには、その入門の路をやすくして、帳合にも日本の縦の文字を用い、法を西洋にして体裁を日本にせんこと、一大緊要の事なり。たとえば学者先生の家にして・・・ 福沢諭吉 「小学教育の事」
・・・もしも果して然るものとするときは、この欠点は何によりて生じたるものか、その原因を推究すること緊要なり。 教育の欠点といえば、教師の不徳と教書の不経なることならん。然るに我が日本において、開闢以来稀なる不徳の教師を輩出して、稀なる不経の書・・・ 福沢諭吉 「徳育如何」
・・・事情を詳らかにせんとするは、容易なることにあらざるが故に、彼らをして我が真面目を知らしめんとするには、事の細大に論なく、仮令え無用に属する外見の虚飾にても、先ずその形を示して我を知るの道を開くこと甚だ緊要なりとす。即ち我が国衣食住の有様は云・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・人間社会の事物今日の風にてあらん限りは、外面の体裁に文野の変遷こそあるべけれ、百千年の後に至るまでも一片の瘠我慢は立国の大本としてこれを重んじ、いよいよますますこれを培養してその原素の発達を助くること緊要なるべし。すなわち国家風教の貴き所以・・・ 福沢諭吉 「瘠我慢の説」
・・・各論文は、当時の文学的動向に対して常に緊要と認められた問題にふれているばかりでなく、プロレタリア文学の若き一人の支持者として「『敗北』の文学」を書き、又「過渡時代の道標」を書いた筆者自身が、かかる急速な左翼文化・文芸運動の波の裡にあって、強・・・ 宮本百合子 「『文芸評論』出版について」
出典:青空文庫