・・・なるほど平生おれに片意地なところはある、あるけれども今度の事は自分に無理はない、されば家じゅう悦んで、滞りなく纏まる事と思いのほか、本人の不承知、佐介も乗り気にならぬという次第で父は劫が煮えて仕方がない、知らず知らず片意地になりかけている。・・・ 伊藤左千夫 「春の潮」
・・・、おまけに私という厄介者まで附いているような始末で、正直なところ、今度のような話を取り逃した日には、滅多にもうそういう口はございませんからね……これはお光さんだけへの話ですけれど、私はどうか今度の話が纏まるように、一生懸命お不動様へ願がけし・・・ 小栗風葉 「深川女房」
・・・換言すれば形式の上ではよく纏まるけれども、中味から云うといっこう纏っていないというような場合が出て来るのであります。がつまり外からして観察をして相手を離れてその形をきめるだけで内部へ入り込んでその裏面の活動からして自から出る形式を捉え得ない・・・ 夏目漱石 「中味と形式」
・・・ 余が進んで文部省に取消を求めざる限り、また文部省が余に意志の屈従を強いざる限りは、この問題はこれより以上に纏まるはずがない。従って落ち付かざる所に落ち着いて、歳月をこのままに流れて行くかも知れない。解決の出来ぬように解釈された一種の事・・・ 夏目漱石 「博士問題の成行」
出典:青空文庫