・・・等と叫んだり、自分が蛇になって二人の弟のアダムとイブに、「貴女そりゃあ美味しいのよ、 おあがりなさい。 神様がけちんぼうだから食べるなっておっしゃるのよ。等と云うので母に心配がらせた事も少くはなかった。私があ・・・ 宮本百合子 「追憶」
・・・随分美味しいわ、よーく肥ってるんだもの。 雌鴨は泥だらけの虫を、嘴で振り廻しながら云った。「有難うよほんとに美味しいね。 けれ共考えて見りゃあ私共はほんとに、運が好いんだよ。今まで何処へ行ったって食べるものには困ったこと・・・ 宮本百合子 「一条の繩」
・・・ ロシヤの夏といえば、ほんとに美味しい西瓜を思い出す。大きい切に塩をつけて、それをかじりながらパンをたべたりする。 ヴォルガ河を夏とおる船は、その平屋根に西瓜をのせて通っているし、この河で釣れるキスのような魚の清汁の味は実によかった・・・ 宮本百合子 「モスクワ」
・・・私共は、斯うやって丁度寒くも暑くもないものを着、おなかが一杯に成るお美味しいものを食べさせて戴き、楽しい学校に通って勉強しています。其を若し彼の人達が見たら如何那心持がするでしょう、僕は知らん振りをしては居られません。此処にはいない、私共の・・・ 宮本百合子 「私の見た米国の少年」
出典:青空文庫