・・・ すると、雲もなく研きあげられたような群青の空から、まっ白な雪が、さぎの毛のように、いちめんに落ちてきました。それは下の平原の雪や、ビール色の日光、茶いろのひのきでできあがった、しずかな奇麗な日曜日を、一そう美しくしたのです。 子ど・・・ 宮沢賢治 「水仙月の四日」
・・・ よっぽど西にその太陽が傾いて、いま入ったばかりの雲の間から沢山の白い光の棒を投げそれは向うの山脈のあちこちに落ちてさびしい群青の泣き笑いをします。 有平糖の洋傘もいまは普通の赤と白とのキャラコです。 それから今度は風が吹きたち・・・ 宮沢賢治 「チュウリップの幻術」
・・・ そこで黄色なダァリヤは、さびしく顔を見合せて、それから西の群青の山脈にその大きな瞳を投げました。 かんばしくきらびやかな、秋の一日は暮れ、露は落ち星はめぐり、そしてあのまなづるが、三つの花の上の空をだまって飛んで過ぎました。「・・・ 宮沢賢治 「まなづるとダァリヤ」
・・・あちこちの木がみなきれいに光り山は群青でまぶしい泣き笑いのように見えたのでした。けれどもキッコは大へんに心もちがふさいでいました。慶助はあんまりいばっているしひどい。それに鉛筆も授業がすんでからいくらさがしてももう見えなかったのです。ど・・・ 宮沢賢治 「みじかい木ぺん」
・・・頸の、群青色等は又とないほど輝いて、そのまんま私の頸に巻きつけたいほどだ。足なんかもさえた卵色をして居る。 食べるのは惜しいからこのまんま飼おうと云ったが聞き入れられなかった。甚五郎爺も、あまり食物がないからとってきたのにたべないなら又・・・ 宮本百合子 「農村」
出典:青空文庫