・・・p.95 英国人らしい道徳観の肥満性 ○イギリス文学における節度 道徳のキソまで手をつけようとしない。 ○ユーモアの各種の起源 ○しかしこの節度は大戦後やぶられた。やぶられつつやぶられない・・・ 宮本百合子 「ツワイク「三人の巨匠」」
・・・大兵肥満の甘利は大盃を続けざまに干して、若侍どもにさまざまの芸をさせている。「三河の水の勢いも小山が堰けばつい折れる。凄じいのは音ばかり」こんな歌を歌って一座はどよめく。そのうち夜がふけたので、甘利は大勢に暇をやって、あとに・・・ 森鴎外 「佐橋甚五郎」
・・・座敷は極めて殺風景に出来ていて、床の間にはいかがわしい文晁の大幅が掛けてある。肥満した、赤ら顔の、八字髭の濃い主人を始として、客の傍にも一々毒々しい緑色の切れを張った脇息が置いてある。杯盤の世話を焼いているのは、色の蒼い、髪の薄い、目が好く・・・ 森鴎外 「鼠坂」
出典:青空文庫