・・・この能才な青年作家は、おそらくもうすでに、彼の才能のするどさ、みずぎわだったあざやかさというものは、いってみれば彼の才能の刃ですっぱり切ることのできる種類のものしか切っていないからだということを知っているであろう。彼は今日からのちどのように・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・氏の文章をよむと、科学的なもの、文学的なもの、絵画的なものが一箇の能才者の内部に綜合された諸要素として立ち現われて来ている。寺田氏の科学的業績を云々する資格はもとよりないのであるけれども、文学的遺業について見ると、寺田氏がこの人生に向った角・・・ 宮本百合子 「作家のみた科学者の文学的活動」
・・・をもっていないということに苦しみはじめた若い能才の作家・批評家たちが、「ゴマカシの利かない」演劇へ新しい芸術意欲をかけて行こうとすることも、そう感じている人々にとっては無意味でなかろう。 その結果いかんにかかわらず、「雲の会」のような脱・・・ 宮本百合子 「人間性・政治・文学(1)」
・・・バルザックが、以上のような規準に従って現実ととり組み、自身の文体をも構造しようと努力した態度の内には、今日においても学ぶべき創作上の鋭い暗示、真の芸術的能才者の示唆を含んでいる。それだのに、バルザックは何故作品の実際では、あのように量的には・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・ 村山知義氏は一人の能才者である。彼は画を描き戯曲を書き、新たな劇運動にとって欠くべからざる演出者の一人である。この二三年来は小説も書かれる。興味あることは、村山氏がゴーリキイの「どん底」を昨年新たな認識で上演し好評を博したことはわれわ・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムへの道」
出典:青空文庫