・・・を尽くしている時代に相当する、遠からず漫画の「正風」を興すものがかえって海のかなたから生まれはしないかという気もする。ほんとうはこれこそ日本人の当然手を着けるべき領域であろう。 映画と国民性 すべての芸術にはそれぞれ・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・尤も国民的なる大芸術を興すには個人も国家もそれ相当に金と力と時間の犠牲を払わなければならぬ。万が一しくじった場合には損害ばかりが残って危険かも知れぬ。日本のような貧乏な国ではいかに思想上価値があるからとてもしワグナアの如き楽劇一曲をやや完全・・・ 永井荷風 「妾宅」
・・・ さて自然主義は遠慮なく事実そのままを人の前に暴露し、または描き出すため種々なる欠点を生ずるに至りましたが、これを救うは過去のローマン主義を復興するにあらずして、新ローマン主義ともいうべきものを興すにあろうかと思う。新ローマン主義という・・・ 夏目漱石 「教育と文芸」
・・・而して其家を興すは即ち婦人の智徳にして争う可らざるの事実なるに、漫に之を評して無智と言う、漫評果して漫にして取るに足らざるなり。或は婦人が戸外百般の経営に暗きが故に無智なりと言わんか、是れは婦人の天稟愚なるが故に暗きに非ず、事に関係せざるが・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・一 女子の結婚は男子に等しく、他家に嫁するあり、実家に居て壻養子するあり、或は男女共に実家を離れて新家を興すことあり。其事情は如何ようにても、既に結婚したる上は、夫婦は偕老同穴、苦楽相共の契約を守りて、仮初にも背く可らず。女子が生涯娘な・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
出典:青空文庫