此スバーと云う物語は、インドの有名な哲学者で文学者の、タゴールが作ったものです。インド人ですが英国で勉強をし立派な沢山の本を書いています。六七年前、日本にも来た事がありました。此人の文章は実に美しく、云い表わしたい十の・・・ 著:タゴールラビンドラナート 訳:宮本百合子 「唖娘スバー」
・・・この外套には、白線の制帽も似合って、まさしく英国の海軍将校のように見えるだろうと、すこし自信もあったようです。白のカシミヤの手袋を用い、厳寒の候には、白い絹のショオルをぐるぐる頸に巻きつけました。凍え死すとも、厚ぼったい毛糸の類は用いぬ覚悟・・・ 太宰治 「おしゃれ童子」
・・・JACOB WASSERMANN 千七百三十二年の暮に近い頃であった。英国はジョージ第二世の政府を戴いて居た。或晩夜廻りが倫敦の町を廻って居ると、テンプルバアに近い所で、若い娘が途に倒れているのを見付けた。「一人者の死」SCHNIT・・・ 太宰治 「女の決闘」
・・・それが云わば敵国の英国の学者の日蝕観測の結果からある程度まで確かめられたので、事柄は世人の眼に一種のロマンチックな色彩を帯びるようになって来た。そして人々はあたかも急に天から異人が降って来たかのように驚異の眼を彼の身辺に集注した。 彼の・・・ 寺田寅彦 「アインシュタイン」
・・・それが日比谷公園の一角に、英国より寄贈されたものだという説明の札をつけて植えてある「花水木」というのと少なくも花だけはよく似ているようである。しかし植物図鑑で捜してみるとこれは「やまぼうし」一名「やまぐわ」というものに相当するらしい。 ・・・ 寺田寅彦 「あひると猿」
・・・この読本は英国人の教師が生徒の発音を正しくするために用いたので、訳読には日本人の教師が別の書物を用いた。その中で記憶に残っているものは、マコーレーのクライブの伝。パアレーの『万国史』。フランクリンの『自叙伝』。ゴールドスミスの『ウェークフィ・・・ 永井荷風 「十六、七のころ」
・・・モオリスはその主義として芸術の専門的偏狭を憎みあくまでその一般的鑑賞と実用とを欲したために、時にはかえって極端過激なる議論をしているが、しかしその言う処は敢て英国のみならず、殊にわが日本の社会なぞに対してはこの上もない教訓として聴かれべきも・・・ 永井荷風 「妾宅」
・・・受けてこれを読むに、けだし近時英国の碩学スペンサー氏の万物の追世化成の説を祖述し、さらに創意発明するところあり。よってもってわが邦の制度文物、異日必ずまさになるべき云々の状を論ず。すこぶる精微を極め、文辞また婉宕なり。大いに世の佶屈難句なる・・・ 中江兆民 「将来の日本」
・・・ 声。英国においてカーライルを苦しめたる声は独逸においてショペンハウアを苦しめたる声である。ショペンハウア云う。「カントは活力論を著せり、余は反って活力を弔う文を草せんとす。物を打つ音、物を敲く音、物の転がる音は皆活力の濫用にして余はこ・・・ 夏目漱石 「カーライル博物館」
・・・「ブローアム? ブローアムたなんだい」「英国の文学者さ」「道理で知らんと思った。僕は自慢じゃないが文学者の名なんかシェクスピヤとミルトンとそのほかに二三人しか知らんのだ」 津田君はこんな人間と学問上の議論をするのは無駄だと思・・・ 夏目漱石 「琴のそら音」
出典:青空文庫