・・・すると長老は僕の容子にこういう気もちを感じたとみえ、僕らに椅子を薦める前に半ば気の毒そうに説明しました。「どうか我々の宗教の生活教であることを忘れずにください。我々の神、――『生命の樹』の教えは『旺盛に生きよ』というのですから。……ラッ・・・ 芥川竜之介 「河童」
・・・だがひとたび不幸にしてその女性としての、本質を汚した女性、媚を売る習慣の中に生きた女性を、まだ二十五歳以下の青年学生の清き青春のパートナーとして、私は薦めることのできないものである。 彼女たちにはまた相応しき相手があるであろう。 い・・・ 倉田百三 「学生と生活」
・・・また現代世界の科学界に対する一服の緩和剤としてこれを薦めるのもあながち無用の業ではないのである。 寺田寅彦 「科学上の骨董趣味と温故知新」
・・・この詞ははからず聞いたのであるが、実は聞くまでもない、外記が薦めるには、そう言って薦めるにきまっている。こう思うと、数馬は立ってもすわってもいられぬような気がする。自分は御先代の引立てをこうむったには違いない。しかし元服をしてからのちの自分・・・ 森鴎外 「阿部一族」
出典:青空文庫