・・・広島の平和都市、長崎の国際都市建設案を、議会満場一致で賛成、感謝したところで、民間人の代表めかしてものをいう人の本心が、こうも荒々しい実際を見れば、して貰うことは何でも感謝の、こじき根性と衷心において侮蔑を感じられてもしかたがあるまい。・・・ 宮本百合子 「鬼畜の言葉」
・・・という標語を示した時、母たるドイツの勤労女性の生活苦闘の衷心からの描き手であったケーテ・コルヴィッツは、どんな心持で、この侵略軍人生産者としてだけ母性を認めたシュペングラーの号令をきいただろうか。その頃から日本権力も侵略戦争を進行させていて・・・ 宮本百合子 「ケーテ・コルヴィッツの画業」
・・・ いくとおりかの例のうちで、誰の衷心にもその響にこたえるなにものかをふくんでいるのは、第二の若い人々の心情にある渇望についてである。これについて少し考えてみよう。人間社会の進展の原理が社会科学の立場から解明され、社会主義の社会、共産・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・の人間価値を評価し、彼ほど衷心から戦争の犯罪性を指摘するなら、人民階級の独裁ということと、金と権力をひっくるめて独占するということとの間にあるちがいについても学ぼうとするだろう。――これはもとより、わたしが「道標」の前半を、どのように書くこ・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・ 又もう一方の場合では、只さえ、今の煮え切らない箇性の乏しい、我国の女性に同情はしながらも、その解放の為に叫びながらも、衷心の不満を押えられないで居る男子が、兎に角、自分というものを持って、ピチピチとはねる小魚のように生きて居るこちらの・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・ジイドは、赤い広場で行われたゴーリキイの感動的な葬儀に参加し、衷心からソヴェトの大衆に向って新世界に対する自己の傾倒を語り、それから約二ヵ月ソ連邦のあちらこちらを旅行した。「鋼鉄はいかに鍛えられたか」の著者、オストロフスキーをもわざわざ南露・・・ 宮本百合子 「ジイドとそのソヴェト旅行記」
・・・そして、思えば、先生がいつとはなしに私に及ぼしたああいう深い人間的な感銘と、よりよい人生への願いはとりも直さず、若かった先生が御自身の女性としての生涯にも衷心から求めていられたものではなかっただろうか。 人及び女性としてのその真摯な希望・・・ 宮本百合子 「時代と人々」
・・・若い心の同感と鼓舞と共々な努力として、行動隊員が活動することを衷心から期待する。 不良への警告 真面目な親と娘たちにとって毎年のぞましからぬシーズンのおくりものがある。それは不良青年に対する警告である。けれども・・・ 宮本百合子 「女性週評」
・・・先ごろ来朝していた作家シーモノフが、日本の出版界にもそれを衷心から希望したとおり、ソヴェト同盟の出版事業は直接に人民文化の仕事として企画され運営されている。どうしてそんないい条件の『星』や『レーニングラード』が、くだらないゾシチェンコに叩頭・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・いま、わたしたちが、中国人民の勝利に対して衷心からのよろこびと友誼の感情を語るにつけ、日本の帝国主義が、中国解放のために最悪の妨害的存在以外の何ものでもなかったという事実を思いかえさずにはいられません。しかし、中国の人々は人民たる真情によっ・・・ 宮本百合子 「宋慶齢への手紙」
出典:青空文庫