・・・むしろわれわれが要望するのは最も柔和なる者の獅子吼である。最も優美なる者の烈々たる雄叫びである。そしてキリストも日蓮も実はかかる性格者の典型であった。 その内心に私を蔵する者は予言者たり得ない。そのたましいに「天」を宿さぬものは予言者た・・・ 倉田百三 「学生と先哲」
・・・イギリスでマクドナルドの労働党が多数をしめて労働党内閣となったのも、生活を打開しようとする大衆の要望のあらわれであった。しかし、ごく表面しか見ることのできない一人の婦人旅行者であるわたしの眼に映った一九二九年のロンドンは、マクドナルドの労働・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第八巻)」
・・・の主観的な印象批評に対して、文学作品のより客観的科学的な批評の必要が提唱されていた時代であった。また文学作品の評価のよりどころとしての社会性の課題がとりあげられ「調べた作品」の要望もおこっていた。当時、無産派の文学としてあらわれていた作品は・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第六巻)」
・・・社会事情の推移につれて生れ消える現象をおっかけて批判したり要望してはおっつかない段階にたっている。わたしたち日本の実直な市民として、一生の大部分を家事についやす主婦として、日常の生活に、教育に、読書や娯楽に、どういう文化を求めているかという・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・文学においては、ドイツのハイネ、ロシアのツルゲーネフなどが新時代の黎明を語った時代で、一般の人々の自主独立的な生活への要望はきわめて高まっていた。ウィルヘルム二世は一八四七年、国内に信仰の自由を許す法律を公布した。ところが、僅か二年ばかりで・・・ 宮本百合子 「ケーテ・コルヴィッツの画業」
・・・出発のはじめから、保守の重いかげとたたかいつつある日本民主化の途上で自分たちの血と涙とをとおして平和を要望し、そのための世界的協力を切望している日本の婦人大衆の誠意をここに披瀝いたします。日本の目ざめた婦人大衆は、自分たちの真心からのよびか・・・ 宮本百合子 「国際民婦連へのメッセージ」
・・・この点に切実な生活からの要望があると思う。六年で尋常が終ったときでさえ中途でやめて小学校さえ出ていない少年少女は、物心づいて周囲を見まわしたとき、無限の悲しさと寂しさとひけめとを感じただろう。その小さい女の子たちが母親になったとき、どんなに・・・ 宮本百合子 「国民学校への過程」
・・・ そのようなこんにち、一方では、社会的・歴史的な人類としてわれわれが生きている証左たる、理性の覚醒としての文学、を要望する思いが、切実である。広汎な読者がそれを要求しているばかりでなく、文学者自身のうちに、その要求が疼いている。 こ・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・ よく生きたいという女の希望の面は多様だが、今日、若い世代に一番共通なのは、どうかして自分たち女が、実にいい愉しい妻であり、母であって、同時に自分自身の生活というものも持ってゆきたいという要望ではないだろうか。女であるから男を愛する自然・・・ 宮本百合子 「『この心の誇り』」
・・・勤労するこの社会の大多数者の芸術化の要望が湧き上って、過去の文学の形式、内容は、全く新しい光りの下に見直されはじめた。文学についての新しい見かた、人間の良心というものの現実生活に即しての新局面の展開が、文学の上に行われるようになった。有島武・・・ 宮本百合子 「今日の文学と文学賞」
出典:青空文庫