・・・今でも頭にあることは、書く字の要点に非常な注意と、成人の心持とを見通したことだ。例えば、巳という字と己という字との違い、これなどは紛れやすいから、きっとこんなのを試験に出すのだろう、よく覚えて置こう、と思うのである。 そんなことを考えな・・・ 宮本百合子 「入学試験前後」
・・・作者は当時、その微妙な要点を洞察するだけの客観的な社会性を自身の現実観察の眼に具えて居なかった次第でした。 しかし、この作品は私の作家的生涯に大きい意味を持っています。千枚近い長篇を熱心に書き通したことは作家としての技術を習熟さすために・・・ 宮本百合子 「「伸子」について」
・・・ アドミラル・トーゴーの勇名が世界に轟いたのは、それらの内的外的の特殊な時代的特徴の濃い諸要点の結合の結果であった。元帥ほどの人物が、そこを見落していなかったことは、彼の日常生活の簡素な心がけや、歴史の上に箇人的武勇を誇示することを嫌っ・・・ 宮本百合子 「花のたより」
・・・ 境遇の善悪、幸不幸などと云うことは、それによって人格が何等かの影響を与えられるからこそ問題となり得るのです。要点を云えば、境遇と云うのも、単に具体的現象の種々な相自身を指すのではなく――親が無い、極度に孤独だと云うその事実を云うのでは・・・ 宮本百合子 「ひしがれた女性と語る」
・・・特に、最近世界情勢の必然から文化・文学におけるヒューマニズムの運動が擡頭しつつある折から、批評文学にとって以上の諸要点は更に益々その錯綜した具体的諸関係の中で闡明される必要がある。この一冊の評論集の内容が、今日の新しい社会と文学との情勢の中・・・ 宮本百合子 「『文芸評論』出版について」
・・・教師であり、学生であったというのは過去の一因縁で、互が最も屡々接近する機会を与えた偶然な一つの社会的関係と見られます。要点は、彼等の恋愛に対する態度にあると思います。 相互に真実な愛もなく、一方は無智による無我夢中、一方は醜劣な獣心の跳・・・ 宮本百合子 「惨めな無我夢中」
・・・結婚が最も冒険であり一大事であるのは、運命的な要点が他人の書いたどの本にも載っていないという事です。〔一九二四年五月〕 宮本百合子 「嫁入前の現代女性に是非読んで貰いたい書籍」
・・・ 御返事の要点に触れなかったかもしれませんが。〔一九二三年三月〕 宮本百合子 「四十代の主婦に美しい人は少い」
・・・こういう軟かく瑞々しい感情をもっている方が、先生として報告文学の要点をのみこんで、記録をつくったらば、意味のあるものが書けそうに思われます。 一、自己を愛する 会沢貞子 これも感想を書いたものとなっています。そういうものとしては・・・ 宮本百合子 「ルポルタージュの読後感」
・・・そしてその手紙の要点を掴まえようと努力した。手紙の内容を約めて見れば、こうである。政治は多数を相手にした為事である。それだから政治をするには、今でも多数を動かしている宗教に重きを置かなくてはならない。ドイツは内治の上では、全く宗教を異にして・・・ 森鴎外 「かのように」
出典:青空文庫