・・・もし私の眼や手になんらかの変化が起ったら、その新しい眼と手で私の過去を見直し造り直してみよう。そしてその上に未来の足場を建ててみよう。もしそれが出来たら「厄年」というものの意義が新しい光明に照らされて私の前に現われはしまいか。 こう思っ・・・ 寺田寅彦 「厄年と etc.」
・・・前にも断わっておいたとおりこのような比較対照は厳密な意味では本来無理であるのに、それにもかかわらずそれをあえてしたのは、これによって連句というものをなんらか新しい光のもとに見直し、それによって未来の連句への予想と暗示とを求めるための手段とし・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・、従っていろんな傾向が眠っているわけだけれども、あらゆる時代を通じて若い人たちは、きっと、その親たちよりはよりましでより合理的な生活を送りたいと希望して来たのだという動かしがたい事実を、私たちは改めて見直していいのだろう。人間がまだ穴居生活・・・ 宮本百合子 「家庭創造の情熱」
・・・客観的に今日の文化がそういう欲求を内包しているからこそ、散文精神の見直しが試みられもしたのであったろうと思う。〔一九三九年十一月〕 宮本百合子 「現実と文学」
・・・ びっくりして、自分は腰をおとし母親の白い顔を正面から見直した。「何をさ」「何って!」 さもじれったそうに眉をしかめた。「もう二人も白状しちまったそうじゃないか。お前が出したものは出したと云って、あやまりさえすればすぐ帰・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・過去数年間、新しき文学と作家の社会性拡大のために先頭に立っていたプロレタリア作家たちが、続々とあとへすさって来て、林氏のように自身の文学の本質を我から切々と抹殺し、或は西鶴を見直して、散文精神を唱え出した武田麟太郎氏のように一般人間性、性格・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ 戦争中の日本の文化殺戮の実状や、日本の文化人が歴史的に自主性を欠いていることについての反省は、日本の近代史の見直しと共に真摯な課題となって来ている。日本の作家のおくれている状態は市民精神に於ておくれたまま、文学は神聖な超俗的な仕事・・・ 宮本百合子 「作家への新風」
・・・封筒の表を改めて見直したら、写真一葉領置と書きこんである。私は合図をして手紙が投げこまれたと同じ窓越しに話をしはじめた。「今の手紙に、写真が領置になっているらしいんですが、其を下げるにはどういう手続きをとったらいいのでしょうか」「明・・・ 宮本百合子 「写真」
・・・先に文芸復興の声と共に流行した古典の研究、明治文学の見直し等が、正当な方法を否定していたために、新しい作家の新しい文学創造の養いとなり得なかったことを見て来たが、この過去への瞥見が谷崎、永井、正宗、徳田など、最近の数年間は活動の目立たなかっ・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・りに浮び上らせて来ないから、読んだ人がそこから自分と自分の周囲を考えるヒントを得て来ることも出来ないし、又、書いている人自身にしても、そのルポルタージュをかくことで自分の生活や気持を社会の関係のなかで見直したしかめてゆく助けにならせることも・・・ 宮本百合子 「新女性のルポルタージュより」
出典:青空文庫