・・・此一面より見れば愚なるが如くなれども、方向を転じて日常居家の区域に入り、婦人の専ら任ずる所に就て濃に之を視察すれば、衣服飲食の事を始めとして、婢僕の取扱い、音信贈答の注意、来客の接待饗応、四時遊楽の趣向、尚お進んで子女の養育、病人の看護等、・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・ あるいは一人と一人との私交なれば、近く接して交情をまっとうするの例もなきに非ざれども、その人、相集まりて種族を成し、この種族と、かの種族と相交わるにいたりては、此彼遠く離れて精神を局外に置き遠方より視察するに非ざれば、他の真情を判断して交・・・ 福沢諭吉 「学者安心論」
・・・ 然りといえども、よく事理を詳し、そのよるところ、その安んずるところを視察せば、人おのおのその才に所長あり、その志に所好あり、所好は必ず長じ、所長は必ず好む。今天下の士君子、もっぱら世事に鞅掌し、干城の業を事とするも、あるいは止むをえざ・・・ 福沢諭吉 「中元祝酒の記」
・・・ またあるいは説を作り、西洋文明の人と称する者にても、その男女の内行決して潔清なるにあらず、表面はともかくも、裏面に廻りて内部を視察すれば、醜に堪えざるもの多し、何ぞ必ずしも独り日本人を咎むるに足らんなどいう者なきにあらず。これは我が国・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・一寸視察に出よう。事によると禁止をしなければなるまい。」 そこでネネムは、部下の検事を随えて、今日もまちへ出ました。そして検事の案内で、まっすぐに奇術大一座のある処に参りました。奇術は今や丁度まっ最中です。 ネネムは、検事と一緒に中・・・ 宮沢賢治 「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」
・・・ K市の年中行事として行われる「共同視察」参観者の列席の前で、佐田は児童との初歩的な階級性を帯びた質問応答によって彼の発見しつつある新しい教育法を示威しようとしたことから、ついに反動教育と決裂する。あやまれといわれたことに対して、体じゅ・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・ところが、戦争が進むにつれ、軍そのものが、偽りで固めた人民むけ報道のためには、むしろ作家報道員を邪魔にしはじめたとともに、一般に、戦線視察にたいする作家たちの熱心がうすれてきた。どうして、作家たちが初期の期待をうしなってきたのであったろうか・・・ 宮本百合子 「歌声よ、おこれ」
・・・ 工場見学隊を組織し、集団農場視察団を組織して、生産の場所に在る大衆の中へ進出したソヴェト・プロレタリア作家たちは発見した。本当に、唯物弁証主義的手法――プロレタリア・リアリズムを獲得するために、芸術は、どこまでも生産の場所になければな・・・ 宮本百合子 「「鎌と鎚」工場の文学研究会」
・・・戦時中彼はヨーロッパ漫遊をしてナチスと兄弟となっていた日本権力の活躍ぶりを視察して、本も著している。鈴木文史朗の暴言に答えて「そんなことはできない」と答えたときのパロット氏の表情が見たかった。鈴木文史朗という新聞記者だったものがアメリカまで・・・ 宮本百合子 「鬼畜の言葉」
・・・司令部とともに、視察した。前線での文学の夕べを組織し、即興芝居への台本を提供した。壁新聞を手伝った。 その演習後文学新聞に赤軍指導者の面白い批判が掲載された。 今度の経験によってもロカフの組織は、プロレタリア作家の階級的発展に必須な・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
出典:青空文庫