・・・今なら私は河上氏の言葉をこう解する、「河上氏も私も程度の差こそあれ、第四階級とは全く異なった圏内に生きている人間だという点においては全く同一だ。河上氏がそうであるごとく、ことに私は第四階級とはなんらの接触点をも持ちえぬのだ。私が第四階級の人・・・ 有島武郎 「宣言一つ」
・・・私はマルクスの唯物史観をかくのごとく解するものである。 ところが資本主義の経済生活は、漸次に種子をその土壌から切り放すような傾向を馴致した。マルクスがその「宣言」にいっているように、従来現存していたところの人々間の美しい精神的交渉は、漸・・・ 有島武郎 「想片」
・・・ 赤帽の言葉を善意に解するにつけても、いやしくも中山高帽を冠って、外套も服も身に添った、洋行がえりの大学教授が、端近へ押出して、その際じたばたすべきではあるまい。 宗吉は――煙草は喫まないが――その火鉢の傍へ引籠ろうとして、靴を返し・・・ 泉鏡花 「売色鴨南蛮」
・・・ 飛附いて扶けようと思ったが、動けるどころの沙汰ではないので、人はかような苦しい場合にも自ら馬鹿々々しい滑稽の趣味を解するのでありまする、小宮山はあまりの事に噴出して、我と我身を打笑い、「小宮山何というざまだ、まるでこりゃ木戸銭は見ての・・・ 泉鏡花 「湯女の魂」
・・・ 君と僕とは、境遇の差があまりにはなはだしいから、とうてい互いにあい解するということはできぬものらしい。君のごとき境遇にある人の目から見て、僕のごとき者の内面は観察も想像およぶはずのものであるまい。いかな明敏な人でも、君と僕だけ境遇が違・・・ 伊藤左千夫 「去年」
・・・澄むの難く濁るの易き、水の如き人間の思潮は、忽ちの内に、濁流の支配する処となった、所謂現時の上流社会なるものが、精神的趣味の修養を欠ける結果、品位ある娯楽を解するの頭脳がないのである、彼等が蕩々相率ひて、浅薄下劣な娯楽に耽るに至れるは勢の自・・・ 伊藤左千夫 「茶の湯の手帳」
・・・ 文芸が趣味であり、また、単に自己享楽のためであり、若しくは、芸であると解する人々は、いかに理窟を言っても、根性の底に、昔の幇間的態度の抜けないのを見る。それは文芸の隆盛な時代は、大概太平な時代であったからである。そして、芸術が享楽階級・・・ 小川未明 「芸術は革命的精神に醗酵す」
・・・その人達が、何のために苛められるのか、私は、それを解することができなかったのです。 人間には、弱い者を踏み躙るという、醜い本能があります。私は子供の時分から、敏感にそのことを感じました。そして、いつも苛められる弱い生徒が、体を固くして、・・・ 小川未明 「自分を鞭打つ感激より」
・・・感覚、有ゆる思想を働かして自我の充実を求めて行く生活、そして何を見、何に触れるにしても直ちに其の物から出来るだけの経験と感覚とを得て生活の充実をはかる、此れが即ち人間のなすべき事であり、又人生であると解する。そして此の心を持って自然を見主観・・・ 小川未明 「絶望より生ずる文芸」
・・・かくの如き意味に真理を解するならその解答は可能である。ジットリヒカイトの場合にも厳密にこれと等しい。ある特別の場合に正しく行為せんためにはわれらは何を行ない何を禁止すべきか。かかる問いに対しては完全な答えは不可能である。何故ならこれに答える・・・ 倉田百三 「学生と教養」
出典:青空文庫