・・・「もう、五六日したら、記事も解禁になるだろうと思いますが。」善光寺は、新聞社につとめていた。 さちよは、静かに窓のカーテンをあけた。あたしは、病院でこの善光寺助七の腕に抱かれて泣いたのだ。「あなたは、いつから来ていたの?」冷い語・・・ 太宰治 「火の鳥」
・・・ ことしの六月、鮎の解禁の日にも、佐野君は原稿用紙やらペンやら、戦争と平和やらを鞄にいれ、財布には、数種の蚊針を秘めて伊豆の或る温泉場へ出かけた。 四五日して、たくさんの鮎を、買って帰京した。柳の葉くらいの鮎を二匹、釣り上げて得意顔・・・ 太宰治 「令嬢アユ」
・・・慶長六年には彼はオルガンチノに対してキリシタンをほめ、その解禁のために尽力した。同十二年にも、パエスのために斡旋している。宣教師に対して、禁教緩和の望みがあるような印象を与えたのは、彼とその子息の上野守なのである。一向宗の狂信が依然として続・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫