・・・科学的に、人間生活が解釈され得るとするも、それは、ある部分にしかすぎない。社会科学の場合と常に同様に考えることはできぬ。人間の生活が、科学の法則のみによって支配されるものでないからである。そして、永久に、説明しつくされざる何ものかを残してい・・・ 小川未明 「純情主義を想う」
・・・という言葉がアラビヤ最初の言葉として発せられた時、たまたま沙漠に風が吹いてその青年の口に砂がはいったからだと、私は解釈している、更に私をして敷衍せしむれば、私は進化論を信ずる者ではないが、「キャッキャッ」という音は実は人類の祖先だと信じられ・・・ 織田作之助 「可能性の文学」
・・・室に帰ってきて幾度電報を繰りひろげてみても、ほかに解釈のしようもなかった。「やっぱしこんなことだったのか。それにしてもまさかおやじとは思ってなかった。雪子のことばかし心配していたんだが、この間から気になっていた烏啼きや、ゆうべあんなつま・・・ 葛西善蔵 「父の出郷」
・・・僕は母に交って此方に来て、母は今、横浜の宅に居ますが、里子は両方を交る/″\介抱して、二人の不幸をば一人で正直に解釈し、たゞ/\怨霊の業とのみ信じて、二人の胸の中の真の苦悩を全然知らないのです。 僕は酒を飲むことを里子からも医師からも禁・・・ 国木田独歩 「運命論者」
・・・ 三 恋愛の本質は何か 恋愛とは何かという問題は昔から種々なる立場からの種々な解釈があって、もとより定説はない。プラトンのように寓話的なもの、ショウペンハウエルのように形而上学的なもの、エレン・ケイのような人格主義的・・・ 倉田百三 「学生と生活」
・・・「振い寄ると解釈すりゃ、ダンスでもする奴かな。」 七 少佐は、松木にとって、笑ってすませる競争者ではなかった。 二人が玄関から這入って行った、丁度その時、少佐は勝手口から出て来た。彼は不機嫌に怒って、ぷりぷりしていた・・・ 黒島伝治 「渦巻ける烏の群」
・・・ 若崎には解釈出来なかった。「竜なら竜、虎なら虎の木彫をする。殿様御前に出て、鋸、手斧、鑿、小刀を使ってだんだんとその形を刻み出す。次第に形がおよそ分明になって来る。その間には失敗は無い。たとい有ったにしても、何とでも作意を用いて、・・・ 幸田露伴 「鵞鳥」
・・・まれそれ知られては行くも憂し行かぬも憂しと肚のうちは一上一下虚々実々、発矢の二三十も列べて闘いたれどその間に足は記憶ある二階へ登り花明らかに鳥何とやら書いた額の下へついに落ち着くこととなれば六十四条の解釈もほぼ定まり同伴の男が隣座敷へ出てい・・・ 斎藤緑雨 「かくれんぼ」
・・・而してその当然の解釈が、信ぜず従わずをもって単なる現状の告白とせず、進んでこれを積極の理想とするに傾くとすれば、これも私には疑惑圏内の一要素となるばかりで、最後の解決とはならない。 かくのごとくしていわゆる人生観上の自然主義も私には疑い・・・ 島村抱月 「序に代えて人生観上の自然主義を論ず」
・・・彼は、スバーが自分の不具を悲しんで泣くとは知らず此ほかの解釈を、その涙に対して下そうともしませんでした。 終に暦が調べられ、結婚の儀式は吉日を選んで行われました。 娘の唖な事を隠して他人の手に引渡して、スバーの両親は故郷に帰って仕舞・・・ 著:タゴールラビンドラナート 訳:宮本百合子 「唖娘スバー」
出典:青空文庫