・・・さて文士連と何の触接点があるかと云うと、当時流行のある女優を、文士連も崇拝しているし、中尉達も崇拝しているに過ぎない。中尉達の方では、それに金を掛けているだけが違う。それでも竜騎兵中尉は折々文士のいる卓に来て、余り気も附けずに話を聞いて、微・・・ 著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外 「世界漫遊」
・・・ 要するにこれらのモンタージュの要訣は、二つの心像の識閾の下に隠れた潜在意識的な領域の触接作用によってそこに二つのものの「化合物」にも比較さるべき新しいものを生ずるということである。 識閾の上層だけでつながったものは、つまり一つの静・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・狭く南画などとは云わず、一般に芸術というものが科学などの圧迫に無関係に永存し得べき肝心の要素に触接しているように思われるのである。 津田君といえども伝習の羈絆を脱却するのは困難である。あるいは支那人や大雅堂蕪村やあるいは竹田のような幻像・・・ 寺田寅彦 「津田青楓君の画と南画の芸術的価値」
・・・この文壇の人々と予とは、あるいは全く接触点を闕いでいる、あるいは些の触接点があるとしても、ただ行路の人が彼往き我来る間に、忽ち相顧みてまた忽ち相忘るるが如きに過ぎない。我は彼に求むる所がなく、彼もまた我に求むる所がない。縦いまた樗牛と予との・・・ 森鴎外 「鴎外漁史とは誰ぞ」
・・・ 自然主義ということを、こっちでも言っていたが、あれはただつとめて自然に触接するように書くというだけの意義と見て好い。それは芸術というものがそうなくてはならないものである。 自然主義というものに、恐ろしい、悪い意義があるように言い触・・・ 森鴎外 「文芸の主義」
出典:青空文庫