・・・「学位令の解釈上、学位は辞退し得べしとの判断を下すべき余地あるにもかかわらず、毫も小生の意志を眼中に置く事なく、一図に辞退し得ずと定められたる文部大臣に対し小生は不快の念を抱くものなる事を茲に言明致します。「文部大臣が文部大臣の意見・・・ 夏目漱石 「博士問題の成行」
・・・清水は綴じあわせたケイ紙を見せ、「しかし、これを御覧なさい、『大衆の友』はちゃんとそうであると言明していますよ」「そう云った人があるのなら、なお更口真似は出来ない。『働く婦人』の投書だとかそのほか書いてあることが、あなた方から見て共・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・ 政府によって言明された大量馘首政策が比較的ゆるやかなテンポで行われているのも勤労階級の組織力によっておされているからです。最も退嬰的であると考えられていた教員、全逓・官公庁の職員も婦人をこめて今は前線に進んでいます。農民組合は日本全国・・・ 宮本百合子 「国際民婦連へのメッセージ」
・・・しかしまた同じ日本の新聞はほんの小さく世界戦争の危機は迫っていないという大統領に立候補するスタッセンの言明をのせています。同じく大統領候補者のウォーレスは、「戦争ちょう発はアメリカ人民自身の幸福を破壊するものである」と。こうしてみる・・・ 宮本百合子 「世界は平和を欲す」
・・・現に労働法の改悪は、日本の労働組合の分裂作業が効果を現わしてからでなければ、とりあげない方がよいと日本の役人が言明している。 文化の為にでも他の生産の為にでも、働いているものは人間的な働きの条件を求める心から、社会が合理的に発展してゆく・・・ 宮本百合子 「前進的な勢力の結集」
・・・それが、当時では、云い難い一種のセンセーションを起させることで、自分の入学しようと言明する学校の名によって、その人の学術に対する自信が、裏書せられるように感じるのであった。 皆の入ろうとする処が判ると、暗黙の競争が行われ始める。一日おき・・・ 宮本百合子 「入学試験前後」
・・・ 産児制限を、不道徳であると婦人科の女医師である吉岡彌生女史が数年前言明したことは、一般の人々を呆然とさせた。科学に従事する者の間にさえそういう迷蒙の残っている現代の理性の水準である。男の医者その他の人々の中に、優生学の見地にたっての断・・・ 宮本百合子 「花のたより」
・・・まさかお父う様だって、草昧の世に一国民の造った神話を、そのまま歴史だと信じてはいられまいが、うかと神話が歴史でないと云うことを言明しては、人生の重大な物の一角が崩れ始めて、船底の穴から水の這入るように物質的思想が這入って来て、船を沈没させず・・・ 森鴎外 「かのように」
出典:青空文庫