・・・なに、見た所は、普通の計量器と、ちっとも変りはしません。あの人が上る所に、本なりカンヴァスなりを、のせればよいのです。額縁や製本も、少しは測定上邪魔になるそうですが、そう云う誤差は後で訂正するから、大丈夫です。」「それはとにかく、便利な・・・ 芥川竜之介 「MENSURA ZOILI」
・・・それでも三銭五銭と計量炭を毎日のように買うんだからね、全くやりきれや仕ない」「全く骨だね」とお徳は優しく言った。 以上炭の噂まで来ると二人は最初の木戸の事は最早口に出さないで何時しか元のお徳お源に立還りぺちゃくちゃと仲善く喋舌り合っ・・・ 国木田独歩 「竹の木戸」
・・・ レニンの仕事は科学でないだけに、その人のその仕事の遂行者としてのえらさは必ずしも目前の成果のみで計量する事が出来ない。それにもかかわらずレニンのえらさは一般の世人に分りやすい種類のものである。取扱っているものが人間の社会で、使っている・・・ 寺田寅彦 「アインシュタイン」
・・・ これらの原始的なしかし驚嘆すべき計量単位の巧妙な系統によって、われわれの祖先は遠い昔から立派な力学的世界像を構成していた。近ごろになってわれわれはそれを少しばかり整理しみがき上げて、そうしていかめしい学という名をつけたのである。 ・・・ 寺田寅彦 「映画の世界像」
・・・、創意性などを計量し、「労作にむすびついた教育、具体的実践に結合した」教育こそ小学教育の基礎であると感じる。 たとえば「窓ふき」という集団的労作を子供らがみずから分業に組織したことを驚異した佐田が、そこから生産労働の分業について子供らに・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・戦時中、愚劣とわかり野蛮とわかっていたファシズム治安維持法そのものに、まともに抗争しようとしなかった日本の知性の特色が、ここではっきり計量されている。第二次大戦を経たのちは、ファシズムの戦争挑発に対して、どの国の人民も抗議を感じている。しか・・・ 宮本百合子 「世紀の「分別」」
・・・事を一層紛糾させている他の社会的な心理は、極めて現代風の経済観念、打算が若い心にも反映していて男女とも、結婚は経済的社会的安定の基礎として計量する小ざかしさが生じていることである。男がそのような計量で恋愛をするのみか、若い女も今日では、あわ・・・ 宮本百合子 「成長意慾としての恋愛」
・・・そのようないわば勘定高い民主主義者が、文化・文学の領域の問題となるとどうして全線的な観点から計量しようとする熱心をそこなわれるのでしょうか。ここに一人の民主主義作家があって、現にその作品は数万、十数万という広い人々の間に読まれている時、そし・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・日夜揉まれて、自身の大胆な手足から頸根っこまで現世的紛糾に絡みつかれつつ、小説の上にその社会的人間関係を再現しようとするに当っては、自身の上にとびかかって来る雑多な印象、観察、観念の間に、はっきりした計量が出来なかったように思われる。バルザ・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・生産の計量に当っては、田舎の若い単純で素朴な女の子の、長時間単調な労作に耐える能力、家族的な従順さに馴らされている気質、それがそれなりに止めておかれて、それであるからこそ労働の素質として好適と見られている。文化の上から見ればおくれている素質・・・ 宮本百合子 「婦人の文化的な創造力」
出典:青空文庫