・・・この上は鉄道員の許諾を得、少しの間線路を通行させて貰わねばならぬ。自分は駅員の集合してる所に到って、かねて避難している乳牛を引上げるについてここより本所停車場までの線路の通行を許してくれと乞うた。駅員らは何か話合うていたらしく、自分の切願に・・・ 伊藤左千夫 「水害雑録」
・・・私はやむをえないから、ここに先生の許諾を得て、「さようならごきげんよう」のほかに、私自身の言葉を蛇足ながらつけ加えて、先生の告別の辞が、先生の希望どおり、先生の薫陶を受けた多くの人々の目に留まるように取り計らうのである。そうしてその多くの人・・・ 夏目漱石 「ケーベル先生の告別」
・・・いやしくも二者の許諾を得ざるものは、どこまでも一家の批判に過ぎない。それが当然である。しかるに一家の批判を以て任ずべき文芸家もしくは文学家が、国家を代表する政府の威信の下に、突如として国家を代表する文芸家と化するの結果として、天下をして彼ら・・・ 夏目漱石 「文芸委員は何をするか」
・・・多分君は私が許諾するか、拒絶するかと思っていただろう。それに私の答は許諾でもなければ、拒絶でもなかったから、君のためには意外であったかと思われる。とにかく君は、格別難有がる様子もなく、私に同意した。 私は使を遣って下役の人を呼んで、それ・・・ 森鴎外 「二人の友」
出典:青空文庫