・・・芭蕉のごとく消極的な俳句を造るものでも李白のような放縦な詩を詠ずるものでもけっして閑人ではありません。普通の大臣豪族よりも、有意義な生活を送って、皆それぞれに人生の大目的に貢献しております。 理想とは何でもない。いかにして生存するがもっ・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・〔『日本』明治三十二年三月三十日〕 曙覧が客観的景象を詠ずるは、新材料を入れたることにおいて、新趣味を捉えしことにおいて、『万葉』より一歩を進めたるとともに、新言語新句法を用いしことにおいて、一般歌人よりは自在に言いこなすことを・・・ 正岡子規 「曙覧の歌」
・・・芭蕉集中牡丹を詠ずるもの一、二句に過ぎず。その句また 尾張より東武に下る時牡丹蘂深くわけ出る蜂の名残かな 芭蕉 桃隣新宅自画自讃寒からぬ露や牡丹の花の蜜 同等のごとき、前者はただ季の景物として牡丹を用い、・・・ 正岡子規 「俳人蕪村」
出典:青空文庫