・・・見を追懸けた亭主が、値が出来ないで舌打をして引返す……煙草入に引懸っただぼ鯊を、鳥の毛の采配で釣ろうと構えて、ストンと外した玉屋の爺様が、餌箱を検べる体に、財布を覗いて鬱ぎ込む、歯磨屋の卓子の上に、お試用に掬出した粉が白く散って、売るものの・・・ 泉鏡花 「露肆」
・・・類の医療の父として語られるヒポクラテスの話におよびさらに、ウィリアム・ハーヴェーの血液循環の発見があり、やがてパストゥールによって細菌が発見されたのも、ジェンナーの種痘の試みも、モルトンによる麻睡薬の試用も、すべて十九世紀の人々の偉業である・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・ 地質がよくないとは云え、機械農業が発達さえすれば、今までより少しは多く収獲が有るのは定まった事だろうのに、農民は、発明される機械を試用する気にならず、又其を十分利用するだけ、序(的な頭脳は無いものの方が多いのでもあろう。 斯うして・・・ 宮本百合子 「農村」
出典:青空文庫