・・・それ以来逢わぬからまだこの人のレビュー観を詳らかにすることが出来ない。 数日たった後に帝劇で映画の間奏として出演しているウィンナ舞踊団を見た。アメリカのと比べてどこか「理論」の匂いがある。それだけにやはり充実した理窟なしの活力といったよ・・・ 寺田寅彦 「マーカス・ショーとレビュー式教育」
・・・の事はすべて人間の大秘密に属して、言う者もなく聞く者もなく、事実の有無にかかわらず外面の美風だけはこれを維持してなお未だ破壊に至らずといえども、不幸なるは我が日本国の旧習俗にして、事の起源は今日、得て詳らかにするに由なしといえども、古来家の・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・精細的美 外に広きものこれを複雑と謂い、内に詳らかなるものこれを精細と謂う。精細の妙は印象を明瞭ならしむるにあり。芭蕉の叙事形容に粗にして風韻に勝ちたるは、芭蕉の好んでなしたるところなりといえども、一は精細的美を知らざりしに・・・ 正岡子規 「俳人蕪村」
・・・ 河上徹太郎、小林秀雄諸氏によって、その伝記が余り詳らかでないシェストフは日本文壇に渡来させられた。シェストフはキエフ生れのロシア人で一九一七年にロシアからフランスへ亡命した評論家である。『ドストイェフスキーとニイチェ』そのほか六巻の著・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・けれども多くを詳らかに見ることは直ちに「自然」を深く見ることにはならない。彼らの眼が鋭さを増さない限り、彼らの経験がいかに積み重ねられようとも、質は依然として変わらないのである。ここに私は「書き方」の上でますます精練と簡潔と円熟とを加えて来・・・ 和辻哲郎 「「自然」を深めよ」
出典:青空文庫