・・・の強い語感と誤解されるおそれがある。だから大阪弁の「そうだ」は文字には書けず、私など苦心惨憺した結果「そうだ」と書いて、「そうだす」と同じ意味だが、「す」を省略した言葉だというまわりくどい説明を含んだ書き方でごまかしているのである。が、これ・・・ 織田作之助 「大阪の可能性」
・・・ 現代文学が波瀾をしのいで成長するには、過去という語感でなく明日へという感覚での客観的な健全な歴史感で今日が把握され、その情熱の裡に創造力がはぐくまれてゆくしかないだろうと思う。そして、そのような可能は、作品の水平動と作家の上下動との個・・・ 宮本百合子 「昭和十五年度の文学様相」
・・・文学作品のいのちは、訳しにくいような表現のなかに案外ふくまれているとも云えるのだから、もしそうだとすれば、私たちは読者として、云わば一番その作者らしくその作品らしい精髄はぬきすてたあとの、至極常識的な語感でもわかる部分だけ買わされ、よまされ・・・ 宮本百合子 「翻訳の価値」
・・・というのと幾分違った語感を伴なうに至っていることをも認めざるを得なかった。先生が「なければならない」という言葉に出会うごとに感じられたような不快な感じを、わたくしたちは感じないばかりか、そこに新しい表現が作り出されているようにさえ感じていた・・・ 和辻哲郎 「露伴先生の思い出」
出典:青空文庫