・・・が真実の軍部批判と戦争批判、日本の平和建設の誠意をどの程度までたたえているでしょうか。二・二六秘史についても、あの事件が日本の侵略戦争遂行のための暴動であったいきさつにはふれないで、青年将校の純情さの一面を浮び出させている。そして、「兵は、・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・今日の私たちの心持のなかには、避けがたい事情で一家の主・良人・父を喪った母と子とがそのめぐり合わせに挫かれず、一層の誠意で互に扶け合いながら人間として健全に成長しようと努めている家庭を、それなりに自然な家庭の姿としてうけいれ声援してゆきたい・・・ 宮本百合子 「いい家庭の又の姿」
・・・総辞職を求めて来た四党代表に向って、首相が自由にものをいったら、そして、その場での誠意を表明しようとしたら、彼は、国を憂えているという自身の心を証明するために、更にどう話をつづけたであろうか。楢橋氏の「ストップ」令は、何をストップさせたので・・・ 宮本百合子 「一票の教訓」
・・・少なからぬ困難が予想されるが、私は読者の忍耐と誠意と自身の熱意とに信頼して、この仕事をやって見る。この人生に明らかな知性と豊かで健全な人間的情熱の発動を熱望する一人の作家が、今日の現実を見る勉強としてやって見るつもりである。日本文学史全巻を・・・ 宮本百合子 「意味深き今日の日本文学の相貌を」
・・・自分に分って貰おうと思う誠意と話したいことがあり、聴衆を信ずれば、人前で話すことも恐くはない。そういうことが会得された。それ以来、必要な時には、私は聴衆がそこに来ている心持の或る面と自分の心持の或る面との接触を信じて講演をするようになった。・・・ 宮本百合子 「打あけ話」
・・・文芸映画としてのよりどころは、後半にあったと思うが、後半での妻の演技的迫力がもう一つ足りなかったので、誠意はあるにかかわらず心理的な動きのボリュームが減った。 この頃は不自由でソヴェトの映画をなかなか見ることができなくなった。現代、あっ・・・ 宮本百合子 「映画の恋愛」
・・・共学が誠意をもって実行されなくてはならない。安倍能成氏は文部大臣となって女子に全国の専門学校、大学を開放し得るであろうか、ここに試金石の一つがある。 大衆課税 去る十二日の夕餉のテーブルに、なかなか味なおくりも・・・ 宮本百合子 「女の手帖」
・・・現代の若い世代は、自分とひととの人生にまともに面して、負うている責任の感情を自身にたしかめてみて、そこが肯定されればその誠意を自信のよりどころと思いきわめて生きるほかはないと思う。 女のひとが人生への責任を自分から自分とひととの運命・・・ 宮本百合子 「女の歴史」
・・・このような基本点での独断を強引に押しつけようとする非難に屈さないのは、むしろ当然ではあるまいか。誠意ある批評とか完成のための忠言とかいうものは、こういう本質のずれた議論の上になりたつものではない。 革命的小市民というのは、社会の現状に一・・・ 宮本百合子 「河上氏に答える」
・・・書肆富山房も誠意がないではなかったが、買った本は誰が買ったか分からぬので、正誤表の送りようがないと云うことであった。帝国劇場で第一部の興行のあった時、第一部の正誤表は出来ていたので、富山房はそれを劇場で配布しようかとも云った。しかし私は本を・・・ 森鴎外 「不苦心談」
出典:青空文庫