・・・さあ、しっかり談判しなくちゃいけないと考えて耕一はどきっとしました。又三郎はたしかに二人の居たのも知っていたようでしたが、わざといかにも考え込んでいるという風で二人の前を知らないふりして通って行こうとしました。「又三郎、うわぁい。」耕一・・・ 宮沢賢治 「風野又三郎」
・・・そこが区民としては虫が好かない点だったろう。虫のすかないのは同感だが、虫がすかないからと云って私たちは、素朴な、口実を与える方法で自分たちの大局的自主性を失おうとは思うまい。そこが談判のしどころであろう。その場の必要な行政的権限を確保しつつ・・・ 宮本百合子 「人民戦線への一歩」
・・・その前、ゴーリキイはこの労働者に対する射撃を防ごうとして他の同志とともにウイッテと会い、熱心に談判したがきき入れられなかった。ツァーの砲火の下に罪なく無智な労働者、女、子供の血が雪を染める間、ゴーリキイは大衆に混ってこの歴史的殺戮の証人とな・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの人及び芸術」
出典:青空文庫