・・・驚いたは新蔵ばかりでなく、このお敏に目をかけていた新蔵の母親も心配して、請人を始め伝手から伝手へ、手を廻して探しましたが、どうしても行く方が分りません。やれ、看護婦になっているのを見たの、やれ、妾になったと云う噂があるの、と、取沙汰だけはい・・・ 芥川竜之介 「妖婆」
・・・そればかりじゃあ無い、奉公をしようと云ったって請人というものが無けりゃあ堅い良い家じゃあ置いてくれやしないし、他人ばかりの中へ出りゃあ、この児はこういう訳のものだから愍然だと思ってくれる人だって有りゃあしない。だから他郷へ出て苦労をするにし・・・ 幸田露伴 「雁坂越」
・・・この交際はいずれも皆人民の身の上に引受け、人々その責に任ずべきものにして、政府はあたかも人民の交際に調印して請人に立ちたる者の如し。 ゆえに、貿易に不正あれば、商人の恥辱なり、これによりて利を失えば、その愚なり。学芸の上達せざるは、学者・・・ 福沢諭吉 「学者安心論」
出典:青空文庫